実験と計算の協奏による二次元フラットバンドマテリアルの創成
【研究キーワード】
二次元材料 / フラットバンド / エピタキシー / 超薄膜 / 走査プローブ顕微鏡 / 全反射高速陽電子回折 / 第一原理電子状態計算 / 角度分解光電子分光
【研究成果の概要】
令和3年度は、初年度にその常温相についての構造と電子状態に関する成果が論文誌に掲載された二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)薄膜上ゲルマニウム(Ge)二重三角格子層の低温における相転移に関する研究が進展した.相転移メカニズム解明を目的として,薄膜試料の全反射高速陽電子回折(TRHEPD)パターンの温度依存性を高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の低速陽電子実験施設において調べた結果,TRHEPD強度は明瞭な温度ヒステリシスを示し,この変位型相転移が強い一次相転移であることが明らかとなった.
また,密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算手法に基づき,ZrB2上Ge二重三角格子の安定構造とその電子状態を系統的に計算し,Ge原子の取り得る二重三角格子構造が複数の準安定状態を有していることを明らかとした.準安定構造の一つは基板上第一層の三角格子が面内に回転することで室温構造の三倍の周期となる構造であり,低温におけるTRHEPD実験の結果と整合するものであった.
初年度にインジウムアンチモン(InSb)単結晶(111)Aウェハ表面をスパッタリングした上で加熱することで得られるInカゴメ格子に関して,第一原理電子状態計算を行い,走査トンネル顕微鏡像や既存の構造モデルとの比較により明らかになった結果をさらに発展させた.Inカゴメ格子上に錫(Sn)原子を加えて計算した結果,Snのカゴメ格子などが安定に存在しうることが明らかとなった.InSb(111)A上のSnの被覆率を変えて計算した結果,フラットバンドが発現する構造も発見した.InSb(111)A表面構造を実際に測定するためのTRHEPD実験にも着手した.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
深谷 有喜 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 | 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター | 研究主幹 | (Kakenデータベース) |
尾崎 泰助 | 東京大学 | 物性研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】44,330千円 (直接経費: 34,100千円、間接経費: 10,230千円)