ハチ目昆虫の脳ケニヨン細胞サブタイプの多様化と行動進化の相関の解析
【研究キーワード】
ハチ目昆虫 / キノコ体 / ケニヨン細胞 / 行動進化 / 転写因子 / セイヨウミツバチ / カブラハバチ / mKast / Mblk-1 / EcR / ChIP-seq解析 / 社会性昆虫 / 脳機能進化 / ミツバチ / ゲノム編集 / 連合学習 / Mblk-1/E93 / ハチ目 / 脳高次中枢
【研究成果の概要】
研究代表者らは、これまでにミツバチの脳高次中枢キノコ体が、遺伝子発現プロファイルの異なる3種類のケニヨン細胞サブタイプ(大型・中間型・小型)から構成されることを発見した。さらに、そのサブタイプの数は原始的なハバチ亜目では1種類、寄生性の有錐類では2種類、営巣性/社会性をもつ有剣類では3種類と、ハチ目昆虫の行動進化に伴い増加した可能性を示唆した。本研究では、ミツバチの各サブタイプ選択的に発現する遺伝子の機能解析と、これら遺伝子の機能および発現パターンの種間比較解析により、ハチ目昆虫の行動進化に伴うキノコ体の機能進化の分子神経基盤の解明を目的とした。
今年度は、ハバチ亜目に属するカブラハバチとミツバチ(有剣類)のケニヨン細胞の遺伝子発現プロファイルの比較から、ミツバチの各サブタイプの機能は、ハチ目昆虫の進化過程で祖先的なケニヨン細胞がもつ機能が分離、特殊化することで獲得された可能性を示唆した。また、ミツバチの「中間型」サブタイプに発現するmKastを標的としたゲノム編集により、初めてノックアウト働き蜂(F2世代)の作出に成功し、現在、変異体働き蜂の表現型解析を進めている。さらに、ミツバチ成虫キノコ体の「大型」と「小型」ケニヨン細胞サブタイプにはそれぞれ、変態に関わる転写因子であるMblk-1とEcRが選択的に発現するが、これら転写因子のChIP-seq解析を行うことにより、Mblk-1が成虫キノコ体では自身の(自律的な)転写活性化能をもち、変態期とは異なり、記憶・学習に関わる遺伝子を標的とすること、EcRは働き蜂の分業(育児、採餌)や採餌行動開始により標的遺伝子群が変化することを見出した。これにより、ミツバチ成虫のキノコ体では、変態期に働く転写因子が新たな標的遺伝子をもつことにより、ミツバチ固有なキノコ体の機能獲得に貢献した可能性を提示した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)