情報ネットワーク社会における個人の利益・価値相互間の調整と不法行為法の役割
【研究分野】民事法学
【研究キーワード】
情報ネットワーク / 知的財産権 / 不法行為法 / 名誉毀損 / プライバシー侵害 / ネットオークション / プロバイダー / 民事責任 / パブリシティ権 / 著作権 / インターネット / 電子メール / 差し止め / 名誉侵害 / プライバシー / 遺伝情報 / 氏名
【研究成果の概要】
情報ネットワークの進展は、社会に生きる個人の利益・価値相互間に衝突や対立が生じさせている。個人に属する私的な生活の局面において、名誉、プライバシー等の利益と、個人の社会経済的な自由な活動が有する価値との調整がここでは重要な課題である。また、個人の思想、表現、アイデアなどの知的な利益と、新たに思想、表現、アイデアを創り出す個人の自由な活動が有する価値との調整も、必要かつ重要であり、そうした利益衝突を調整するための法律上の規律として、不法行為法が中心的な役割を果たすと考えられる。本研究は、このような新たに生起する利益・価値相互間の調整の原理を明らかにすべく検討を進めたものである。検討方法として、不法行為法の機能と役割、あり方を明らかにするため、個人の自由な活動領域(パブリック・ドメイン)の確保という不法行為法に期待される機能の内容と限界に配慮しつつ考察した。さらに、この考察を通して得られた成果をもとに、不法行為法を個人に帰属する無形の利益・価値を衡量し調整するための規律として機能させるため、不法行為法上の基本的な概念につき解釈論的な再構成を試みた。
このような共通テーマを通じた基本的な問題意識の共有のもと、研究分担者各自が論文を執筆した。そのテーマは、ネットワークそのものから生じる問題、ネットワークの整備によって生じる問題など多岐にわたる。これらの論文は、情報ネットワーク社会における個人に属する無形の利益・権利の危殆化について、不法行為法によって解決する際の判断構造・判断基準を提示し、それが同時に、今後のわが国のあるべき社会構造を視野に入れつつ、不法行為法上、「個人の自由な活動が有する価値」、すなわち、「個人の自由な活動領域の確保」を、積極的に位置づけようとするものである。
この成果を基調とし、研究分担者以外のコメンテーターを学外に求め、合同研究会を実施した。
【研究代表者】