セミインタクト細胞系を利用した細胞ストレス応答に関わる翻訳制御機構の解明
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
細胞ストレス / リン酸化 / 翻訳制御 / 可視化 / セミインタクト細胞 / 核移行 / mRNA / 生体シミュレーション / GFP可視化 / 小胞体ストレス / タンパク質の一生 / 酸化ストレス / DNAチップ
【研究成果の概要】
本研究では小胞体ストレスや酸化ストレス等の多様な細胞ストレス付加によって翻訳制御を受けている転写因子ATF4の翻訳制御機構を明らかにするため、ストレス依存的に細胞質内にできてくるストレスグラヌルとATF4のmRNAの相互作用について研究を行った。目的のmRNAを生きた細胞内で可視化するためMS2-tag法を利用した。ATF4、アクチン及び膜タンパク質CD4のmRNAの3‘末端にMS2-配列を挿入したプラスミドとGFP-MS2融合タンパク質のプラスミドをCHO細胞に通常の方法で同時にtransfectionした。この時、GFP-MS"タンパク質には核移行シグナルを挿入し、細胞質内でMS2-tag付きmRNAと結合できなかったGFP-MS2は核へ移行し、細胞質内のmRNAが観察しやすいように工夫した。その結果、生きたCHO細胞内において、ATF4、アクチン及びCD4のmRNAの動態を可視化することに成功した。興味深いことに、アクチンmRNAは細胞底面の周縁部のアクチンフィラメントに沿って局在し、ストレス負荷時にもその局在に影響はなかった。ATF4-mRNAは細胞質全体に散在していたが、ストレス負荷によってもその局在に変化はなかった。これに反し、CD4-mRNAは、ストレス負荷により局在を細胞質からストレスグラニュルに大きく変化させた。これらの結果より、ストレス負荷時に翻訳活性化されるATF4は、細胞質に残り、通常翻訳抑制を受けるCD4等のタンパク質はストレスグラニュルにmRNAが集積し翻訳阻害されると予想された。アクチン等ストレス負荷によって翻訳制御を受けないタンパク質も、そのmRNAの局在を変化させない仕組みがあることが判った。このmRNAの可視化システムは、mRNAのストレスグラニュル局在化による翻訳制御メカニズム解明のための基本アッセイ系となることが判った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
加納 ふみ | 東京大学 | 大学院・総合文化研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2004 - 2005
【配分額】3,100千円 (直接経費: 3,100千円)