立方体型構造の金属クラスターに基づいたクラスター触媒の合成と反応探索
【研究キーワード】
遷移金属 / イリジウム / インジウム / 磁気ボトル型光電子分光法 / レーザー蒸発法 / MALDI質量分析法 / クラスター / 高分子安定化 / レーザーアブレーション / 光電子スペクトル / 量子化学計算 / 低配位数 / 配位不飽和
【研究成果の概要】
気相実験において,バルク状態とは異なる立方体型構造をとることが予測されたイリジウムクラスターの反応性を検討するに当たって,令和3年度は理論計算を用いてCO2の吸着による活性化の可能性を調べた。例えば,イリジウム8量体クラスター負イオンにおいては,立方体型異性体へのCO2の解離吸着(Ir8O(CO)-)と分子吸着(Ir8(CO2)-)の状態を比較すると,前者の方が安定であり,結合エネルギーは1.25 eV大きいことがわかった。このことから,立方体型のイリジウムクラスター負イオンによってCO2を活性化できる可能性が示唆された。
さらに,負イオンによるCO2活性化について調べるため,Au原子負イオンとの反応を調べた。CO2はAu(CO2)錯体中で物理吸着と化学吸着が共存した状態をとるが,計算レベルによって安定な異性体が異なっていた。そこで,真空チャンバ内の冷却部分を改良し,液体窒素の導入量を調整してクラスターソースの温度を制御可能とし,真空中で生成したAu(CO2)-の光電子スペクトルのピーク強度比の温度依存性から異性体の存在比の変化を見積もった。その結果,化学吸着体の方がより安定であることを明らかにした。また,異性体の存在比から異性化反応の平衡定数の温度依存性を見積もり,ファントホッフの式を用いて異性体間のエネルギー差およびCO2がAu-に化学反応吸着する際の結合エネルギーを見積もった。
一方で,インジウムもサイズによって面心立方構造とは異なる構造の系列をとることが理論計算から示唆されていることから,インジウムのクラスターの合成にも着手した。塩化インジウムをジメチルホルムアミド溶液中で水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することによって最終的に褐色のジクロロメタン溶液を得ることに成功した。これを乾燥させてX線光電子スペクトルを測定して,溶液にインジウムが含まれていることを確認した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)