放射年代学から迫る西南日本弧中新世変動の全体像
【研究キーワード】
中新世 / 火成活動 / U-Pb年代 / 瀬戸内火山岩類 / 日本海拡大 / 沖縄トラフ / 放射年代測定 / 日本海形成 / フィリピン海プレート
【研究成果の概要】
代表者の新正は南紀の中新世火成岩,愛知県三河地域の中新世苦鉄質火山岩,奈良盆地周辺の中新世苦鉄質火山岩,高知県足摺岬・室戸岬地域の中新世火成岩について調査,試料採取を行った.また分担者の折橋は熊本県天草地域の珪長質火成岩の調査,試料採取を行った.
これらの岩石および過去に採取した試料について,順次,全岩化学分析とU-Pb年代測定を進めている.全岩化学分析のうち希土類元素を含む微量元素組成の分析はカナダActLabs社に依頼し,ホウ素,塩素の分析は原子力科学研究所のJRR-3原子炉を用いた即発ガンマ線分析で行った.U-Pb年代測定は分担者の平田の研究室に敷設のレーザーアブレーションICP質量分析計を利用して実施した.
熊本県天草地域の珪長質火成岩類については.これまで1300-1900万年前ごろに分散する放射年代が報告されており,その位置づけは明確ではなかった.今回ジルコンU-Pb年代測定を実施して,1400万年代に集中する結果を得た.さらに珪長質火成岩の微量元素組成は瀬戸内火山岩類のデイサイト等と類似するものであった.したがって,本地域の火成活動は瀬戸内火山帯の延長である可能性が高い.この結果については現在学術論文として公表を準備している.
その他,室戸岬のはんれい岩体からは1500万年代後半のジルコンU-Pb年代を得た.これは日本海拡大期の西南日本の時計回り回転直後に四国海盆が西南日本に対面していたことを強く示唆するものである.過去に得たはんれい岩体についての地球化学データと併せて現在学術論文として投稿準備中である.
また,南紀の橋杭岩流紋岩についてもジルコンU-Pb年代測定を実施し,周辺地域に多数分布する珪長質火成岩類の中では古いグループにあることがわかった.本岩脈 は北北西-南南東のトレンドを持つ岩脈群の一つであり,当時の古応力の研究とも結び付けて考察を進めたい.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
平田 岳史 | 東京大学 | 大学院理学系研究科(理学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
折橋 裕二 | 弘前大学 | 理工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)