氷床融解と深層循環の揺らぎをつなぐ-東南極亜寒帯循環から沿岸への輸送過程ー
【研究キーワード】
環境変動 / 酸素安定同位体比 / 南極海 / 氷床融解 / 十年規模変動 / 棚氷海洋相互作用
【研究成果の概要】
南極沿岸海洋は地球の海水位変動と海洋深層循環の鍵を握る。近年加速する南極氷床の流出・融解には、沿岸大陸棚上のホットスポットにおける熱輸送が重要な役割を果たしている。また、ホットスポットでの氷床融解は十年規模で変動し、沿岸コールドスポットから深海底へ沈み込む底層水に指摘されていた低塩化傾向はここ数年で逆転したことも明らかになりつつある。本研究課題では、南極氷床への熱供給メカニズムとその時間的な変動を解明するため、理解の遅れたウェッデル循環東端のコスモノート海を中心に、沿岸ホットスポットへの熱供給プロセスを現場船舶観測により明らかにする。海洋観測データの解析から、ここ30年ほどでトッテン沖では外洋の熱源が大陸棚に近づきつつあることが分かった。こうした熱の輸送経路として、沖合の時計回り循環と南極斜面流の重要性が明らかになった。またコスモノート海では、沖合から大陸棚上への熱供給パスの存在も分かった。我々が強みをもつ氷床融解水のトレーサーである酸素同位体比の国際共同観測網を主導し、氷床から海洋への融解水流出の実態とその十年規模変動を周極的に把握することを目指す。コールドスポットであるケープダンレー沖の解析では、夏季の表層高温と棚氷融解のリンクが明らかになった。数値実験の併用により、底層水形成のタイミングを送らせる働きをすることが見出され、将来の気候では表層水起源の南極氷床融解が海洋深層循環変化につながる可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
草原 和弥 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 地球環境部門(環境変動予測研究センター) | 研究員 | (Kakenデータベース) |
平野 大輔 | 国立極地研究所 | 南極観測センター | 助教 | (Kakenデータベース) |
松村 義正 | 東京大学 | 大気海洋研究所 | 助教 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2021-04-05 - 2026-03-31
【配分額】41,470千円 (直接経費: 31,900千円、間接経費: 9,570千円)