磁化の量子ダイナミックスの機構解明と動的制御
【研究分野】物性一般(含基礎論)
【研究キーワード】
量子スピン系 / ナノスケール単分子磁性 / 非断熱遷移 / ESR / 量子ダイナミックス / スピンクロスオーバー / 量子拡散 / 量子スイッチング / 量子ダイナミクス / スピンパイエルス相転移
【研究成果の概要】
本研究では、量子効果が顕著な役割をする磁性現象において、いわゆる量子一重項を、基本にする非磁性状態ではなく、磁化が存在する場合の量子効果のあり方や、磁化の動的な外場のもとでの量子力学的運動の特徴について詳しく研究した。具体的テーマとして、格子と結合した系におけるスピンパイエルス転移をS=1や格子を量子化した場合などを研究し、スピン配位と格子配位の特異な結合状態を明かにした。また、量子ゆらぎによる基底状態相転移の様子を、XY的な異方性をもつ三角格子反強磁性体で詳しく調べ、スピン相互作用の異方性と外部磁場の関数としての相図を求め、対応する古典系での依存性との比較を行い、量子ゆらぎの効果の特徴を明かにした。
磁気秩序に関しては、ゆらぎによる秩序混合状態など3次元における新しい秩序形態や、量子ゆらぎによって誘起される新しいタイプの秩序相などを明かにした。また、相互作用が強いスピン系における電子スピン共鳴の数値解析法を開発し、直交ダイマー系などでの特徴ある共鳴吸収の様子も明かにした。
量子ダイナミックスに関して、微小磁性体における断熱変化に基づく現象を解析してきた。特にジャロチンスキー・モリヤ相互作用による断熱変化はそのベクトル型の相互作用を反映して、本質的に空間異方性を持ち、磁場掃引する際の磁場の方向によって断熱変化の様子が大きく異なることを明かにした。また、全く異方性を伴わない反発擬交差の起源についても研究を進め、核スピンとの超微細相互作用による機構を提案した。
さらにこれらの現象を利用して、熱散逸を伴わない量子スイッチングの機構も提案した。関連する研究としてスピンによる熱伝導現象や、量子系での散逸のダイナミックスに関する研究も行った。これらの研究によって量子系の特徴を活かした新しい物性活用が可能にする方法について研究を進めている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
齋藤 圭司 (齊藤 圭司) | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)