超流体-固体転移におけるインスタビリティ順序
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
核形成 / 固体核 / 超流動 / ヘリウム4 / 超流体 / 固化 / 巨視的量子トンネリング / MQT / 量子核形成 / 固体
【研究成果の概要】
超流動ヘリウム4の固化の理論モデル(双曲型ロトン模型)を提案し、またそれに基づいて、過加圧下の超流動ヘリウム4における固体核生成について研究を行った。
固化に際して、従来のようにネットな密度の変化についてのインスタビリティーを考えるのではなく、並進対象性の破れについてのインスタビリティーを考えると、実験結果を説明できることを示した。実際、双曲型ロトン模型はこのインスタビリティーの順序を明白に説明する。また、この模型は、融解圧以下のロトンスペクトルを定量的に説明するばかりでなく、まだよく調べられていない領域、すなわち過加圧における準安定な超流動4Heについて下記のような新しい現象を予言する。
(a)密度変化に作用する摂動には安定であるが、並進対称性を破る摂動に対しては非常に弱い。
(b)融解圧上60barでロトンギャップは0となり、超流体は絶対不安定となる。
(c)容器壁近傍では、壁のファンデルワールスポテンシャルによって実効的に圧力が高まり、その結果(b)の圧力は著しく低められ、融解圧上10bar程度での絶対不安定が予想される。
特に(b)は、壁の影響や不純物に起因しない(イントリンシックな)固体核生成が、絶対圧力で85bar以下で起こりうることを主張し、実験家の興味を引いた。エコールノルマル シューペリウールのBalibarらは、これらを参考に収束音波を用いた実験を計画し、2003年3月の開始時に私を招いてくれた。
ガラス壁面に音波の焦点を結ばせると、融解圧上5barで固体核が生成され、(c)とコンシステントな結果となる。焦点が壁面から充分離れるとイントリンシックな核生成が見られると予想されるが、今日の段階(2003年8月)では、まだ観測に至っていない。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)