力学系の解析と関連する幾何学
【研究分野】解析学
【研究キーワード】
可積分シンプレクティック写像 / 1次元力学系 / エントロピー / 放物型方程式 / 自由境界問題
【研究成果の概要】
今年度の研究の概要ならびに得られた成果について主なものを以下に述べる。
1.(離散力学系に関するもの)シンプレクティック写像の不動点の周りでのバ-コフ標準化については,非共鳴不動点の場合は容易であるが,共鳴不動点の場合には研究も少なかった.これに対して伊藤は,実解析的なシンプレクティック写像のバ-コフ標準化の収束性と積分可能性の同値性を,時間に依存するハミルトニアンの標準化の観点から統一的に示した。また、辻井は一次元力学系の族におけるエントロピーの単調性を研究し、凸で対称かつ負のシュワルツ微分を持つ一次元単峰写像に定数を足すという写像族において、多くのエントロピーの値においてエントロピーがその値を越えるとそれ以降はエントロピーがその値より小になることがないという結果(エントロピーの部分的単調性)を証明した。
2.(微分方程式に関するもの)村田は放物型偏微分方程式に対する混合問題の非負解の一意性が成り立つために必要かつ十分な領域の形を決定した。また非有界領域のMartin境界に関して、一般化されたCranston-McConnel型の不等式を証明した。ヴァイスは∂_tu-Δu=-u^γX_<{u>0}> ((t,x)∈R×R^n)という強吸収のついた熱方程式(γ∈[0,1))またはquenching問題(γ∈(-1,1))の解の自由境界点での漸近性状を研究して、自由境界∂{u>0}のHausdoff次元を求めた。さらにγ∈[0,1)の場合はHausdorff測度の評価も証明した。
3.(複素解析に関するもの)複素平面から3次元射影空間への正則写像が代数的に退化するための条件について考察した。問題の正則写像がある特別な代数的超曲面を除外集合として持つとき、指数関数を含む関数方程式が導かれるが、野田はこの方程式の正則関数解の挙動について調べその形を決定した。
【研究代表者】