凍土中のメタンハイドレイトの生成・解離に関する実験的研究
【研究分野】環境保全
【研究キーワード】
メタンハイドレイト / 永久凍土 / 生成・解離 / 不凍水 / 氷晶析出 / 天然ガス / 永晶析出 / エネルギー
【研究成果の概要】
凍土中のメタンハイドレイトの生成・解離特性を測定するため15MPa耐圧の圧力容器、温度・圧力の制御系、測定システムを作成しメタンハイドレイトの生成・解離の実験を行った。実験試料としては、粒度の大きい試料の代表として珪砂(豊浦標準砂)、粒度の小さいものではベントナイトを用いた。また、内径がそれぞれ、10nm,50nmの空隙を持つ、構造のはっきりわかった粉末状ポーラスガラスを用いた。実験において、水分条件としては、水分飽和条件と細孔だけに水が存在する不飽和条件で行った。メタンハイドレイトの生成と解離過程では、大きなヒステリシスが存在し、解離曲線がより平衡状態の曲線に近くなることがわかった。実験結果として水分飽和条件の珪砂(豊浦標準砂)の場合は、メタンハイドレイトの解離曲線と水・メタンのみの系の解離曲線ときわめて良い一致を示した。これは、飽和条件の珪砂中の水の特性が自由水に近いためと考えられる。飽和条件のベントナイトの実験で、解離圧は、純粋なメタン・水系のメタンハイドレイトの解離曲線とほぼ一致した。これは、圧力変化が0.5MPaと小さいことなどから、メタンハイドレイトは試料の表面近くのみで形成されたことによると予想されるが、詳細は今後の課題である。飽和条件のポーラスガラスの場合は水・メタン系の解離曲線と一致した。これは、ポーラスガラス間の空隙中の水が自由水に近いためである。一方、空隙だけに水が存在する不飽和条件では、解離圧が高圧側にシフトするのが測定された。例えば、6MPaの圧力状態で、純粋なメタン・水系の温度からのずれΔTは、50nm細孔の場合は1.2Kであり、10nm細孔の場合は6Kになった。これは、ポーラスガラスの表面力などにより空隙中の水が強く拘束されていることによると考えられる。ポーラスガラス中の水の熱力学的性質を調べるため、核磁気共鳴法(NMR)を用いた不凍水量の測定を行った。この結果から、空隙中の水の凍結温度は自由水のものより大きくマイナスにシフトすることがわかった。これらの結果から、凍土中の、メタンハイドレイトの解離曲線は、水・メタン系のものより、低温高圧側にシフトし、これは、間隙に含まれる水が土粒子表面の表面力を大きく受けているためであることがわかった。今後は、この現象の理論解析を行っていく予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
溝口 勝 | 三重大学 | 生物資源学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1995 - 1996
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)