「介護の社会化」という動向におけるコミュニティケア倫理形成のための理論的研究
【研究分野】哲学・倫理学
【研究キーワード】
善意 / 批判 / 純粋実践理性 / 尊敬 / 連帯 / ケア / コミュニティ / 自己自身に対する義務 / 尊厳 / 環境倫理 / 人間性 / 倫理的強制 / 介護倫理 / ボランティア / 傾注 / 人間中心主義 / 関係 / 幸福 / 実践理性 / 最高善 / 純粋理性の実践的使用
【研究成果の概要】
1、本研究の目的と方法(1)介護保険制度の範囲内における介護現場の人手不足を地域住民のボランティアによって補うことに伴う倫理的問題を理解する視座を得ること。(2)「高齢者の尊厳を支えるケア」という人口に膾灸した物言いに哲学的な基礎を与えること。(3)方法:理論的研究の基盤をドイツの古典的哲学者カントの所説ならびに現代の環境倫理学の論争に求め、他方で国内ならびにドイツ連邦共和国の介護施設を訪問しヒアリングを行う。
2、本研究の経過研究期間を通じて研究に必要な文献を収集し、それをホームページ上に一覧表としてまとめ、'それらを用いて論文四本を執筆・公表した。また、2003年には日本のグループホームやデイサービスセンターを訪問し、2004年と翌年にはドイツ連邦共和国のボンやケルンの高齢者介護施設を訪問し、それぞれの箇所でヒアリングを行ない、ケア倫理に関する資料を収集した。
3、本研究の成果(1)介護現場で「善意は恐ろしい」と語られる問題状況を把握し、ボランティア活動の参加者には、自身の「善意」を批判する態度が必要であること、その「批判」にはカント哲学における「実践理性」と「純粋理性の実践的使用」の峻別が尺度となることを明らかにした。(2)環境倫理学の論争を基礎にして、「高齢者の尊厳」を支えるとは、高齢者を「全体として受け入れる」ことだが、その態度はむしろ「全体」を把握することの困難に直面して感得される畏れとして表現されることを指摘した。(3)尊厳の感得はまずもって自己自身について生じるのであり、ケアスタッフに高齢者の「尊厳を支える」ことを求めるのであれば、地域社会はケアスタッフの「尊厳を支える」ことに参加すべきことを論じた。(4)最後に、コミュニティケア倫理が人間を外的に強制することで倫理性を毀損しないように、「自己自身に対する義務」という観念が重要であることを指摘した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2006
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)