行政計画における意思決定構造と組織学習の動態的連関についての研究
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
組織学習 / 意思決定 / 組織構造 / 政策過程 / 地方財政 / 影響力構造 / 危機認職 / 制度改革 / 政策課題 / 危機 / 地方公共団体
【研究成果の概要】
平成11年に行った組織環境と政策過程に関するアンケート調査の解析から、自治体は、財政、福祉、行政改革を主要な政策課題として捉えていること、さらに、この課題の選択は、組織の影響力構造によって左右されることが明らかになった。すなわち、組織内部の影響力が平等に配分されている場合には、行政改革や環境が重視されるのに対して、逆にこれが集中している組織の場合には、福祉や教育といった課題が組織内部で浮上する傾向がある。
さらに、平成12年に行った地方自治体の財政調査のデータ解析では、地方交付税制度、地方税制度、地方債制度、及び様々な国庫補助金制度などから構成される地方税財政制度は、地方政府の財政行動に対する共通の枠組みを提示するが、その枠の持つ意味は、各地方政府の置かれた条件によって異なることが示された。地方財政制度は、地域経済からの自律性を規定することを通じて、地方政府間の競争の戦略とアリーナとを形作る一方で、地方自治体内部の財政の操作性を規定することを通じて、地方自治体内部でのアクターの相対的な影響力構造を規定している。経済市場から自律性と組織内影響力構造との2つの制約によって、地方政府の財政行動は、説明されるのである。
地方財政の危機に対する認識もまた、このような経済市場からの自律性という側面と地方自治体内部の影響力構造という側面に媒介される。そして、地方財政制度自体を選択の対象とする改革においては、各地方自治体の置かれた経済市場に対する脆弱性の度合いと組織内部の影響力構造によって、改革のパッケージに対する選択が規定され、より自己の組織の位置を向上させるような制度改革が選好される。経済市場の制約と自治体組織内部の影響力構造という政治制約との2つが複合して、地方財政制度の改革の方向を定める。制度によって枠づけられていた組織の経済的政治的条件が、改革というフェイズにおいては、逆に、制度選択を規定する条件へと転ずるのである。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
城山 英明 | 東京大学 | 大学院・法学政治学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
田辺 国昭 | 東京大学 | 大学院・法学政治学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】11,000千円 (直接経費: 11,000千円)