環インド洋西域諸社会における伝統の継承と創出-アジア・アフリカ・アラブ文化の同化と差異化
【研究分野】文化人類学(含民族学・民俗学)
【研究キーワード】
タンザニア / コモロ / マダガスカル / インド洋西域 / 交易ネットワーク / 伝統 / 東南アジア / アラブ・イスラム
【研究成果の概要】
東アフリカ海岸部からマダガスカルにかけての環インド洋西部地域は、アジア・アフリカ・アラブ・ヨーロッパなどのさよざまに異なる文化伝統の相互作用が繰り返され、多元的文化状況が生み出されてきた特異な地域である。本研究計画は、従来単一の地域として研究されることの少なかったこの地域全体を一つの研究対象ととらえ、圏内の各個別社会を相互に関連づけると同時に、広域社会の特性が個別社会の生活圏の中にどのように読み取れるかを探ろうとするものであった。地域が広汎にわたり、また研究代表者、研究分担者各自の時間的制約にもかかわらず、本研究計画はこの地域の多元的文化状況を理解する研究の端緒となり得たという点で、一定の成果をあげることに成功したと言える。
研究代表者、各研究分担者とも、各自の研究地域において広汎な海上及び陸上の交易や人の移動、特殊な儀礼的知識や情報の移動などのネットワークの存在を確認し、それらを実証的に跡付けるとともに、このネットワークに接続した各地域社会における固有の文化状況や問題にも理解を深めることができた。これらの知見を総合して、一つのまとまった成果とするには未だ時期尚早ではあるが、今後のこの地域での研究の確固たる土台は築けたと確信している。
また本研究計画を実施する過程で、マダガスカル、タンザニア両国においてそれぞれの国の研究機関や研究者と共同研究のプロジェクトを発足することができたことも、これらの地域における今後の研究の発展につながる成果である。すでにマダガスカルでは初年度より共同の調査を行なっており、またタンザニアにおいてもダルエスサラーム大学と一橋大学杜会学部のあいだで研究協力の協定を結ぶことができた。
【研究代表者】