高齢社会の法理論-高齢社会における法現象に対する法理論的省察の可能性-
【研究分野】公法学
【研究キーワード】
高齢社会 / 法理論 / 憲法理論 / 福祉国家 / 社会保障 / 自己決定 / 個人の尊重 / 思い遣り / 自律 / 持続可能性 / 統治構造改革
【研究成果の概要】
本共同研究は、高齢社会の到来によって生じる法現象の研究に枠組みを提供できる「法理論」を探求しようとしたものである。本研究では、当該法現象を捉える様々な視点を、法システムの中にあってその首尾一貫性と環境適合性とを検討する法の「反省理論」である「法理論(Rechtstheorie)」という理論のレベルにおいて総合していくことが目指された。
具体的には、本共同研究に多くの公法研究者が参加していることから、高齢社会の「権利論」をめぐって、および、高齢社会における法形成・法執行をめぐって、「高齢社会の公法理論」の形成を目指した。また、そこで得られた理論的成果について、民事法研究者との討議を通じて、民事関係にそれをどこまで適用できるかを追究し、「高齢社会の法理論」の熟成に努めた。特に、「権利論」については、権利関係を把握する「型」の類型化が行われ、法形成・法執行については、その循環的把握を通じた包括的理解が志向された。
本共同研究においては、研究成果をその都度裁判官や行政官などの実務家に伝える機会をもったが、「理論」レベルの研究であるにもかかわらず、実務家の反応はわれわれが驚くほど積極的・肯定的であった。「高齢社会」をめぐる実務の急転換と混乱の中で、多くの実務家は、自分たちの活動が定位できる「理論」を渇望し、われわれの研究に省察の具体的チャンスを見出していた。また、われわれの研究も、実務家との対話を通じて省察され、具体的な危機的現象を視野に入れることによって、異なった理論局面の問題を立体的に捉えることが可能になった。したがって、本研究成果は、学界にとどまらない広い範囲に共鳴盤を見出し得ると思われる。
【研究代表者】