女房ネットワークと職能による言談の展開に関する研究―物語、日記、説話―
【研究キーワード】
女房文学 / 作り物語 / 物語和歌 / 女房日記 / 女房の職能 / 女房 / ネットワーク / 物語 / 日記 / 説話
【研究成果の概要】
本研究は、女房達がもつネットワークと職能とが、女房達の言談・語りの生成に、いかなる連関性を持ち、どのように文学に展開され深化されてきたかを、時代縦断的、ジャンル横断的に考えるものである。女房文学とその周辺の資料も含めて、この新たな視座に基づき、平安・鎌倉期の物語、日記、説話、教訓書などにおける、女房たちの情報・言説・言談の展開を可視化するとともに、このことが日本文学史にもたらしたもの、その結果としての作品形成のあり方を明らかにすることを目的としている。
物語、日記、説話、教訓書などのうち、当該年度は特に物語和歌と、日記をとりあげた。まず、『風葉和歌集』は、鎌倉中期までの約220編の物語から和歌を類聚した、空前絶後の物語歌集である。従来は散逸した物語の復元資料としての意義や、勅撰集に近い特質などが論じられてきたが、恋歌の編纂意識を分析すると、興味深い点が多く見出され、特にジェンダーの視点や異性装の観点からみても新たな発見があり、当時の宮廷女房たちの受容や、女院女房集団の文学営為が浮かび上がった。また、本研究の柱の一つである女房日記について、宮廷女房文学としての『とはずがたり』というテーマで、俯瞰的に、宮廷和歌・歌壇と女房、物語の制作と享受、記録する女房などの観点から論じたことがあるが、これらはすべて女房のネットワークと職能に関わるものである。これらをふまえて今後の研究へと繋げたい。
次に、古典文学研究者である窪田空穂について、総体的に広く論じた著を上梓した。空穂は三大歌集などの評釈で知られているが、実は『源氏物語』や女房文学についても多くの研究があり、それは本研究にも一部関連している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)