イスラム世界における非政府組織ネットワークに関する総合的研究
【研究分野】宗教学
【研究キーワード】
イスラーム / 非政府組織 / ネットワーク / ウラマー / スーフィー教団 / シーア派 / 哲学 / 神秘主義(タサウウフ) / イスラム法学 / ハナフィー派 / イスラム哲学(ファルサファ) / 神秘主義教団 / イスラム
【研究成果の概要】
本研究は、非政府組織ネットワークというテーマを掲げているが、アルカーイダなどの現代イスラーム世界で問題になるグループだけを対象とするわけではない。つまり、スーフィー教団(イスラーム神秘主義教団、タリーカ)、ウラマー(イスラーム法学者)集団、シーア派のネットワークといった、幅広い集団やネットワークが果たしてきた社会的、歴史的な役割を分析対象としているのである。
研究代表者の竹下と、分担者三名がそれぞれの専門分野を踏まえて討議を重ね、情報の整理を行った。その結果、ネットワーク研究における三つの方向性が明らかになった。
第一に、異なる社会階層の間での知の伝達、第二に、それぞれにディシプリンを持つ集団の間での知の伝達、第三に、既存のネットワークが、新たなネットワークが生まれるときに与える影響としての知の伝達である。
第一の分野の成果としては、竹下による中世トルコ社会を形成したスーフィー教団の機能研究がある。結論として、異なる階層であるエリート層と一般庶民との間の二種類の神秘主義の住み分けが見出された。第二の分野の成果は、まず鎌田がシーア派とスーフィー教団との知的交流の証として、シーア派のイマームとスーフィー聖者の存在の類似性を指摘した。さらに仁子が哲学者集団と数学者集団の知的交流の様相を明らかにした。第三の分野の成果としては、柳橋が、ハナフィー学派法学派がほかの法学派の形成に与えた知的影響を明らかにした。
非政府組織に対する、自国または外国の政府による介入や影響力の行使に関する研究は今後の課題である。
【研究代表者】