民族誌データと数理モデルの融合による社会構造変動理論の構築:格差に着目して
【研究キーワード】
不平等 / 災害 / 極端な気象現象 / 格差 / モンゴル / ナミビア / ゲーム理論 / 民族誌データ / 環境変動
【研究成果の概要】
本申請課題の目的は、人間の社会構造における多様性の発生要因および発生過程を、とくに格差に注目して長期的スケールで説明可能なモデルを構築することである。本年度は、ナミビアおよびモンゴルでのフィールド調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症流行のため再度、実施を延期することとなった。その代替として、昨年度に引き続き、すでに入手済みのモンゴルにおける家畜頭数推移の調査データを分析した。分析により、モンゴルにおいて2009-2010の雪害の後、ジニ係数で測定した家畜所有の不平等が拡大したこと、家畜数の少ない世帯間での不平等がとくに顕著であったこと、災害で家畜を多く失った世帯ほど回復が困難となることなどを明らかにした。この研究は学会で報告され、国際誌への投稿を準備中である。また、雪害における格差拡大のメカニズムについては、個体群動態におけるアリー効果に着目した数理モデルを提案し、データを分析した。その結果については別個、学会にて報告し、国際誌への投稿を予定している。数理モデル構築については、ナミビアとモンゴルの事例を包括的に説明可能な一般性の高いモデルの作成を試みている。昨年に引き続き、牧畜と農耕という2つの生業への分散的投資の割合を戦略としてモデル化し、さらに環境変動を加味した場合に、いかなる戦略が均衡戦略となり、その下で財産の不平等の程度がどのようになるかを検討した。
【研究代表者】