中高年者に関連した政策の評価に関する実証分析
【研究キーワード】
政策評価 / 健康 / 健康投資行動 / 健康診断 / 教育と健康 / 健康と教育 / 高齢化
【研究成果の概要】
本年度は、2008年4月に導入された特定健康診査・特定保健指導(以下、特定健診)の導入が中高年者の行動と健康状態に与えた効果の検証を行なった。
これまで、法律により被用者の健診受診率が他と比較して高いことと政策導入前後で健診受診行動に大きな変化がないことの2つの事実に着目した差の差(DID)推定をもとに分析を進めている。労働安全衛生法により被用者は健診受診が義務であるため受診率が90%以上であり、ほとんど全てが政策変更の影響を受ける一方、自営業者では健診受診率が約50%ほどであり、およそ半分しか政策変更の影響を受けない。受診率の違いから生じる2群における処置の程度の差を利用して、被用者を処置群、自営業者を対照群としたDID推定である。
これまでの分析結果から、大学卒以上の中高年男性のサンプルでは、特定健康診査・特定保健指導の導入により、体重減少、肥満指標の改善、運動や食生活の変容が確認された。一方、大学卒未満のサンプルでは、そのような変化は確認されず、政策変更の効果が教育水準により異質であることが示唆された。追加的な分析から、認知能力の違いがこのような効果の異質性を説明する要因の一つである可能性が確認された。
現在、研究成果をまとめた論文を経済学分野の国際学術誌へ投稿中であり、いくつかの雑誌から"reject"の判定を下されたが、有益なコメントを得ることができた。得られたコメントをもとに論文を改訂し、次年度には、別の国際学術誌へ投稿したいと考えている。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2021-08-30 - 2023-03-31
【配分額】3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)