西アフリカの歴史的文明の形成と展開過程に関する歴史人類学的研究
【研究分野】文化人類学・民俗学
【研究キーワード】
西アフリカ / 文明 / 都市 / 交易 / イスラーム
【研究成果の概要】
本研究は、西アフリカ・マリ共和国での現地調査をとおして、西アフリカ内陸に成立した独自の文明の発生と展開の過程を明らかにすることを目的とする。この地域の文明形成過程については、これまでサハラ縦断の西側ルートに沿って研究が進められてきたが、カイロに至るサハラの東側ルートに関しては十分な現地調査がおこなわれてこなかった。本研究は、東側ルートに沿って発展したニジェール川大湾曲部東部のガオ周辺に関心を集中し、社会人類学・歴史人類学・イスラーム史・古生物学などの多分野の日本人研究者とマリ人考古学者との共同作業によって、ニジェール川大湾曲部東部の文明形成過程の総体的にとらえることを目的とする。
竹沢尚一郎と仲谷英夫は、マリ人考古学者とともにガオ旧市街の「カンク・ムサ王のモスク」跡とされてきた遺跡で発掘調査をおこない、大規模な石造建築物の存在を明らかにした。出土品からは、当該遺跡が西アフリカ最古の王宮跡である可能性が非常に高いと考えられる。坂井信三と大稔哲也は、平成18年度はガオ市郊外のガオーサネ遺跡に隣接するムスリム墓地のアラビア語碑文を持つ墓石の調査にあたり、10数個の墓石を新たに記載して、被葬者の名前や性別、死亡の日付などを含む墓誌を解読し、加えて19年度調査では、トンブクトゥ、アラワーンにも足をのばしてアラビア語古文書の保存状況について調査した。
竹沢が中心となって実施したガオ旧市街の石造建築物遺跡の発掘調査は、平成19年度末の時点ではまだ完了していない。また坂井が担った文字資料の研究、とくにガオーサネのアラビア語墓碑の研究は、ガオーサネおよびガオ旧市街の遺跡との関連でその歴史的意義が明らかになる性質のものである。ニジェール川大湾曲部東部の文明形成過程程の全容が明らかにされるには、今後さらに粘り強い研究が必要であろう。
【研究代表者】