日本経済長期停滞のメカニズムの解明
【研究キーワード】
企業動学 / 退出効果 / ゾンビ企業 / 人口構造 / 無形資産 / 経済長期停滞 / 生産性 / 無形資産・人的資産 / 需要不足 / 負の退出効果 / 経済規制 / 長期停滞 / 日本経済
【研究成果の概要】
本研究は(1)企業動学と生産性、(2)無形資産・人的資産と生産性、(3)需要不足とマクロ経済政策の誤謬の三つの分野に分析の焦点を あてる。ここまでの研究実績の主要なものを各研究班ごとにまとめると次のようになる。
(1)企業動学と生産性:中小ゾンビ企業の研究では、東大CREPEで使用可能なTSRデータを整理して、ゾンビIDとゾンビ指標の計算ができるところまでこぎつけた。負の退出効果に関する研究では、TSR、企業活動基本調査、工業統計調査、経済センサスなど様々なデータを使って、生産性成長率の要因分解を行った。重要な結論として、負の退出効果の大きな部分が合併・買収によるものであることがわかったが、その分を差し引いても退出効果が負であるというパズルは残ることがわかった。
(2)無形資産・人的資産と生産性:TSRデータを用いて、米国で最近計測されている各種のビジネスダイナミズムの指標を計算して、概ね類似のパターンが得られることが発見された。ただし、米国におけるダイナミズムの低迷の主因として指摘される市場競争度の低下は日本においては観察されない。企業における大学院卒業生の採用や研究人材の活用方法がイノベーション活動に与える影響を政府個票データおよび独自のアンケート調査をつかって分析したところ、博士号保持者がいる企業ではプロダクト・イノベーションの頻度が高いことが発見された。
(3)需要不足とマクロ経済政策の誤謬:人口構造と貯蓄―投資バランスの検証では家計調査などを用いた簡単な分析では、高齢化が過剰貯蓄をもたらすという通説は単純には支持されないようだということがわかった。人口構造と生産性に関しては、TSRデータを使って、経営者の年齢と生産性の関係を分析した結果、45歳あたりまで年齢をおって上昇した後、その後は下降するということがわかった。
【研究代表者】