都市の歩行促進要因を踏まえた健康まちづくり支援ツールの開発
【研究キーワード】
歩行 / 身体活動 / 都市環境 / ウォーカビリティ / まちづくり
【研究成果の概要】
本研究の第一の目的は、大規模集団の長期間に渡る歩数記録データを用いて、都市環境における歩行の促進・阻害要因とその影響を明らかにすることである。2020年度(および繰越期間)も過年度に引き続き、地域の事情に精通する横浜市職員(健康福祉局、道路局)と意見交換しながら、横浜市「よこはまウォーキングポイント事業」のデータを用いた研究を行い6篇の査読論文を発表した(累計9篇)。例えば、横浜市が整備した遊歩道周辺に居住する高齢女性は加齢に伴う歩数減少が抑制されていたこと(宮川・樋野、2020)、人口密度の低い地域に住む人は高い地域と比べて歩数が少なく3年後にその差が拡大したこと(Hino et al., 2020)、公園の近くに居住する高齢女性はCOVID-19の緊急事態宣言中も歩数減少が抑制されていたこと(Hino & Asami, 2021)などを明らかにした。本研究のように大規模かつ長期間の歩数データを用いた研究は国内外に類が無く、国際的な学術発展に貢献することが期待される。
本研究の第二の目的は、地区の定量的な「Walkability(歩きやすさ)指標」と、自治体や開発事業者向けの「健康まちづくりデザインガイド」から成る「健康まちづくり支援ツール」の開発である。前者は東京大学空間情報科学研究センターが2020年7月に類似指標を開発したことから、上述した大規模歩数データを用いてその指標の検証研究を行った(Hino, et al, 2022)。後者ついては、”Design”, “Diversity”など6のカテゴリーの下に34のキーワードを整理し、7つの事例と関連づけて健康まちづくりの考え方や手法を紹介する「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」を作成、公表した。
【研究代表者】