アジア諸国における「内発的」教育改革能力の構築を巡る政治経済学
【研究分野】教育社会学
【研究キーワード】
教育開発 / 国際協力 / 教育改革 / アジア地域研究 / 能力開発 / 東南アジア / 教育学 / 教育社会学 / 比較教育学 / 国際教育協力 / 政治経済学
【研究成果の概要】
多くのアジア諸国は、グローバリゼーションが深化する中にあって、初等教育の質・効率改善と中等教育及び高等教育の拡大を同時に達成する教育改革を実施する必要があり、国際援助形態としても教育部門のガバナンスやオーナーシップの強化を重視する「セクター・ワイド・アプローチ(SWAp)」の導入が図られてきた。そして「セクター・ワイド・アプローチ」の主な構成要素である「セクター開発プログラム」の策定に際しては、「教育生産関数」に基づく教育部門分析のみでは限界が生じており、政治経済学的な方法論によって教育改革過程における各アクターの行動や相互作用を分析対象に加えることが重要である。そこで、本研究の最終成果として、発展途上国の基礎教育開発における国際教育協力「融合モデル」と、発展途上国の教育開発・改革を巡る政治経済学と分析枠組みを構築した。
本研究では、アジア諸国における主な教育改革過程の分析を通し、中央政府(議会、財務省、教育省)や国際援助機関といったマクロ・レベルのアクター及び地方政府(議会、教育行政官)、住民組織や学校・教師・親・子供といったミクロ・レベルのアクターの行動や相互作用を視野に入れた政治経済学的な概念枠組を帰納的に提示することを試みた。
さらに、本研究で構築した理論モデルを検証するために、東南アジア諸国を中心とした事例研究を実施した。とくにカンボジア、ラオス、ベトナムに関する詳細な事例研究を行い、各国におけるSWAp導入の過程を詳細に分析することで、教育改革を進展させるにあたり異なるアクターたちがどのように関係し合っているのかを明らかにした。
教育開発分野におけるこうした理論研究は、これまで積極的に行われてきたとは言い難いため、このような理論研究の試みの端緒を開いたという意味で、今回の研究の意義を認めることができるであろう。
【研究代表者】