EU統治(ガヴァナンス)の正統性――分野横断的な政策形成過程を切り口として
【研究分野】基礎法学
【研究キーワード】
EU / ガヴァナンス / 正統性 / 政体 / 法秩序 / 制度 / 主権 / 社会構成主義 / ガバナンス / 統治 / 欧州統合
【研究成果の概要】
本研究は、中村民雄(平成14年度研究代表者)が二カ年計画として申請し認められたものである。初年度に中核となる研究と討議(シンポジウム)を行い、論文として年度末に公表した。二年度目(平成15年度)は、中村が文部科学省在外研究員(在イギリス)となったため、研究代表者を平島健司に交代した。
本研究の作業仮説はこうであった。1990年代のEUは、経済共同体から政治社会共同体へと変容し始めたが、その統治制度は経済共同体時代のままであって、政治社会的な価値選択を迫られる問題群への対応が難しくなっている。この制度と活動内容のミスマッチがEU統治の正統性への疑問を引き起こしているのではないか。
この仮説の妥当性を、具体的な事例研究(バイオ・テクノロジー規制の導入、製薬業規制制度の変化、経済通貨統合による構成国の財政政策および社会政策の変容)を通して検証した。その結果、仮説は妥当することが明らかに存った。すなわち、経済共同体時代の公式のEUの制度枠組みを通した問題解決が困難である場合、制度の不備を補完するために、多様な社会的主体の間に政策形成・執行のネットワークが補完的に形成される実態があること(平島・安東・工藤)、同時に欧州議会における欧州次元の政党も次第に形成され、それが国内政党政治へ逆に変容をもたらしていること(小川)が明らかになった。
この成果を踏まえて、このような制度補完的な実務慣行の形成過程を描く手法として、「社会構成主義」の手法や(臼井)、H.L.A.Hartの「承認のルール」の競合状態モデル(中村)、また「主権」概念の歴史性を根本的に疑う方法(遠藤)などを模索した。
【研究代表者】