東南アジア大陸部における後期更新世人類の環境適応の解明
【研究キーワード】
東南アジア大陸部 / ベトナム / 後期更新世 / 石灰岩洞穴遺跡 / 発掘調査 / 生物遺骸 / 環境考古学 / 石灰岩洞穴
【研究成果の概要】
東南アジア大陸部における更新世人類の環境適応を明らかにすることは、ユーラシアの人類史を理解する上できわめて重要である。本研究は、日本とベトナムの国際研究協力体制のもと、ベトナム北部の後期更新世人類遺跡と目されるPhung Quyen石灰岩洞穴を発掘し、当該期の適応戦略の総合的解明を目指す。研究チームには、動物考古学者、考古化学者、花粉分析学者、年代測定学者、考古学者らが参加し、出土動物資料の形態分析、コラーゲンタンパク分析、古DNA分析、花粉分析、AMS年代測定などに従事する。本研究は、先端的な発掘技術と多彩な環境考古学的研究法をベトナムの洞穴調査に導入し、東南アジア大陸部における人類史解明の新たな展開を推進しようとするものである。
2021年度は、日本とベトナムの共同研究チームが、Phung Quyen洞穴の発掘調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19感染拡大を受け日本側研究者の海外渡航中止を余儀なくされたため、日本側研究者はオンラインビデオ通信を利用したリアルタイムのリモート参加とし、ベトナム側研究者と現地雇用ベトナム人作業員が掘削作業に従事する方式に変更した。発掘は2021年7月21日から29日までの9日間で実施した。1m×2mの調査区を設定し、堆積物は全て乾燥フルイで選別して、微細遺物の採取に努めた。調査にかかる人件費・運搬費・年代測定分析費は、本研究資金から拠出した。この発掘において、ホアビン文化期の石器多数と動物資料を収集した。また、出土炭化物5点の年代測定では、5点とも較正年代で約2万4千年前の値を得た。2022年度は、日本側研究者がベトナムを訪問し、出土資料の環境考古学的分析を実施する予定である。また、Phung Quyen洞穴の発掘調査を継続し、資料の増加を目指す。
【研究代表者】