コミュニケーションの視点に基づく合理的意思決定に関する認知科学的研究
【研究キーワード】
合理性 / 意思決定 / コミュニケーション / 非言語情報 / インタラクション / 集団意思決定
【研究成果の概要】
2020年度は、以下の記す3点について計算機シミュレーションや認知実験に基づいて分析を進めた。
まず1点目として、言語表現の違いによって生じる非一貫した私たちの決定行動が、具体的にどのような利得や損失がもたらされているのかについて、新たなパラダイムを想定し、計算機シミュレーションに基づいて理論的な検証を行った。結果として、言語表現に影響を受けた意思決定が必ずしも非合理的になるわけではないことが明らかになった。
2点目として、情報伝達者の表情が情報の受け手である意思決定者に与える影響について認知実験を実施した上で分析を行った。結果として、表情と用いる言語表現の間に相互作用的な影響を意思決定者に与えていることが明らかになった。このことから、従来から指摘されてきた言語ニュアンスの影響は、言語表現が持つ表面的な意味合いからだけでは説明できない影響を持つ可能性が明らかになった。
3点目として、個人特性と合理的な意思決定を促すコミュニケーションの関係性について分析を行った。具体的には、個人が持つ実世界に関する確率的信念によってコミュニケーション行動がどのように変化するかについて分析を行った。結果として、情報伝達者が持つ確率的信念の違いによって情報伝達者が用いる語彙が変化することが明らかになった。このことは、合理的な意思決定を促すコミュニケーションの性質を考えていく上で、個人が持つ確率的信念が重要な要因として関わっている可能性を示す知見である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
植田 一博 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
松香 敏彦 | 千葉大学 | 大学院人文科学研究院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2022-03-31
【配分額】17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)