選好逆転現象をもたらす認知課程の解明とモデル化
【研究分野】認知科学
【研究キーワード】
意思決定 / 選好逆転 / 選択 / 評価容易性仮説 / 属性注目度 / Evaluability Hypothesis
【研究成果の概要】
選好逆転現象を扱った研究は数多く存在する(Schneider & Shanteau,2003)が、それらの研究の中でも近年特に意思決定研究者の注目を集めるのが、複数の対象について「個別に提示して一つの対象への評価を求める」場合と、「全てを同時に提示して全ての対象への評価を求める」場合の選択不一致である。前者を「単独評価(Separete Evaluation)」、後者の方法を「並列評価(Joint Evaluation)」と呼ぶ。本研究では、この同一対象について異なる評価方法によって生じる選好逆転を扱った。
単独、並列評価の間の選好逆転を扱った研究のうち、Hsee(1996)では評定対象の属性値への注目程度の違いから選好逆転を説明するEvaluability Hypothesis(以下EH)を提唱した。EHは、選好逆転の原因を単独評価では程度判断が容易な「Easy属性」に注目し、並列評価では程度判断が困難な「Hard属性」に注目する事に求めた。
本研究が明らかにした事は、次の通りである。単独、並列評価の間において、評定対象の属性値が「Easy属性とHard属性」の場合、選好逆転が生じるのは、Hard属性への注目度が評価条件間で異なるためであった。このHard属性への注目度は、単独評価におけるよりも並列評価においてより高かった。一方Easy属性への注目度は、評価方法間で一定であった。
上記を要するに、本研究はEHの不適切性を明らかにし、選好逆転現象を説明するメカニズムをさらに詳細に解明した。
【研究代表者】