色覚異常における未知の色差知覚特性に立脚した色変換技術の開発
【研究キーワード】
色覚異常 / 色知覚 / 心理物理学 / 色覚
【研究成果の概要】
本研究の目的の一つは、1型/2型色覚における、大きなS色差(S錐体の応答により作り出される色差。およそ黄-紫方向)に対する色差知覚特性を明らかにすることである。そこで、R2年度は、なるべく多くの研究協力者の色差知覚特性を測定する計画であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大のため、特に学外の実験協力者について心理物理実験の実施が困難となってしまった。そこで、今後の心理物理実験の準備を万全にする,R3年度に実施予定であった実験準備を前倒しで行うなど、当初計画とは大幅に異なる項目を実施した。具体的には以下の通りである。
【1 心理物理実験の準備】実験協力者を多く確保する準備として、外部機関の研究者の協力を得て、1型/2型色覚の方々が集まるコミュニティとのコネクションを確立した。これにより、今後より多くの実験協力者にご協力いただきやすい環境が構築できた。
【2 視覚探索実験の準備】本研究課題で着目する閾上色差知覚の特性は、日常生活においては、ターゲットの検出や探索、認識に大きな影響を及ぼすと考えらえる。そこで、日常の課題に対する閾上色差知覚の影響を明らかにするため、色探索の応答時間を計測する実験内容を確定し、また実験環境を整えた。
【3 三色覚者を対象とした閾上色差知覚メカニズムの検討】閾上色差知覚には色弁別とは異なるメカニズムが関与することを示唆する結果は、本研究課題でもすでに得られていたが、そのメカニズムの詳細はほとんど分かっていなかった。そこで、三色覚者が対象ではあるが、色弁別感度と閾上色差知覚を様々な色に対し詳細に計測した。この実験では、知覚対象とする色差が大きくなるにつれ、その知覚が色カテゴリーにより修飾されていくことを示唆する結果が得られた。この結果から、1型/2型の色差知覚特性においても色カテゴリーの影響を考慮すべきであるという研究上の留意点を見出すことができた。
【研究代表者】