IT革命の実態と持続性:ITイノベーションに関する経済分析
【研究分野】応用経済学
【研究キーワード】
IT革命 / 生産性 / パネルデーター分析 / 企業組織 / 産業組織 / ムーアの法則 / 技術革新と組織変化 / 知的所有権政策 / 標準化政策 / ミクロデータ計量分析
【研究成果の概要】
本研究においては、1.IT産業におけるイノベーションの実態と持続性に関する研究、2.ITイノベーションの産業組織に与える影響に関する研究及び3.ITシステムのユーザー産業における経済効果分析の3つの研究テーマを中心として、IT革命の実態に関する経済分析を行った。本研究における成果を要約すると以下のとおりである。
・IT革命の源泉といえるムーアの法則(半導体集積回路の集積度に関する幾何級数的な技術革新)はここ30年以上の間継続しているが、IT産業のイノベーションは90年代後半以降、より大きな経済的インパクトをもたらすようになった。その背景としては、コンピュータのダウンサイジングが進み、インターネットの普及によるITシステムのネットワーク外部性が大きく働くようになったことによる。また、そのイノベーションのスピードは当面の間持続すると考えられる。
・経済のIT化が進むことによって、いわゆる「中抜き現象」といわれる流通システムの合理化が進むといわれている。また、IT革命はデジタル革命を通じて、統合型の企業システムを中心とするモデルから企業間ネットワークをベースとしたモジュール型の産業組織への変革をもたらすといわれている。しかしながら、このような経済システムの変革はエレクトロニクス産業などごく一部の産業に見られるものであることが分った。
・1990年代のITイノベーションのマクロ経済に与える影響については、日米両国で大きな違いがないことが分った。しかしながら、企業レベルで見た分析によるとITイノベーションがユーザー産業に与える効果は比較的限定的なものにとどまっており、日本におけるITイノベーションの経済効果は主にIT産業によるものであることが分った。
【研究代表者】