日本語文献の海外流通から見た第二次世界大戦期日本の文化戦略に関する研究
【研究キーワード】
文化外交 / 日本文学 / 日本研究 / 書物流通 / 読書調査 / 日本近代文学 / 読書論 / 出版流通 / 文化戦略 / 東南アジア / 日本語蔵書
【研究成果の概要】
本研究は、第二次世界大戦前、及び戦中期の日本の文化外交、対外文化工作を、日本の書物の流通という観点からとらえ、その中での文学表現の意味、役割をとらえようとするものである。特に、海外に向けた文化工作を、日本の国内における学知の再編や日本語、日本文化の統制と密接な関係をもったものとして検討している。
当初は、対外文化工作のために海外に設けられた欧米、及び東南アジア諸国の日本文化会館の蔵書調査が予定されていたが、感染症の広がりによる現地調査の困難さもあり、これまでに収集した東南アジア諸国の日本語資料に焦点化して研究成果をまとめていくこととした。ベトナム、及びインドネシアについて、戦時下で構築された日本語文庫について研究を蓄積してきたが、その文庫の具体的な内容に踏み込んだ研究をこの間にまとめることが可能となった。
具体的には、本研究の核となる書物の流通と、戦前、戦中の日本の対外文化政策の関係をあとづけた著書を刊行することができた。戦中に海外で作られた日本語蔵書についてはインドネシアの日本語文庫における物語の役割についての考察が進み、講談ジャンルの表現がそこで果たしていった役割を具体的に明かしていくことができた。両国以外の東南アジア諸国についても、調査、資料収集がほぼ完了していたためその分析をもとにこれまでの研究成果をふまえて東南アジア諸国での日本の文化外交と書物流通の結びつきを明らかにしていった。
また、これとあわせて、国内の文化統制に関わる資料、及びその研究として、戦中に活発化していった読書傾向調査について、研究報告、資料刊行を行った。これによって、ほとんど研究のなされていなかった読書傾向調査が、戦時下の国民読書運動や文化統制に大きく関わっていたことを明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)