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京都府立医科大学 研究Discovery Saga
2025年3月17日

【論文掲載】MERSコロナウイルスに対する高親和性DPP4製剤を開発

~将来のMERSパンデミックに向けて治療効果が期待される~

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
コウモリ/変異体/SPECT/ウイルス感染症/病理/パンデミック/新型コロナウイルス/インフルエンザ/マウス/COVID-19/ウイルス/ワクチン/感染症/公衆衛生/抗体/新型コロナウイルス感染症

研究のポイント

○野生型のDPP4分子と比較して、MERS-CoVスパイクタンパク質に対して30倍以上の結合性、疑似MERS-CoVに対して約500倍の中和活性を示す高親和性DPP4製剤を開発しました。その中和活性は、治療薬として期待される中和抗体と同等でした。 〇高親和性DPP4製剤は広範囲のMERS-CoV変異体に中和活性を示し、2015年 韓国で突発的に発生したヒト免疫から逃避を示す変異体にも有効でした。加えて、コウモリやセンザンコウを宿主とする近縁のコロナウイルスに対しても有効性を示しました。 〇MERS-CoVをヒト細胞に感染後、中和抗体を添加した状態で培養すると中和抗体が効かなくなる(逃避を示す)変異体が出現しました。一方、高親和性DPP4製剤を添加した状態では逃避変異体の出現は確認されませんでした。この結果から、実際の臨床現場で応用された場合でも逃避変異体が出現しにくいことが予測されます。 〇マウスの感染実験ではMERS-CoV感染前に高親和性DPP4製剤を投与することで、高い感染予防効果を誘導することが確認されました。MERS-CoV感染後の投与においても、ウイルス増殖を抑えることが確認され、治療効果も期待されます。 〇高親和性DPP4製剤は高い中和活性と広い有効性を持ち、逃避変異体出現リスクも低いことから、将来起こりうるMERSならびに近縁のウイルスにおけるパンデミックを抑制することが期待されます。  

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学 講師 星野 温、大阪大学蛋白質研究所 准教授 有森貴夫、国立感染症研究所 感染病理部 主任研究官 坂井祐介らの研究グループは、広範囲のMERSコロナウイルス変異体を中和できる高親和性DPP4製剤を開発しました。本研究成果は、2025年3月13日(現地時間)に米国科学雑誌『Cell Biomaterials』に掲載されましたので、お知らせします。  中東呼吸器症候群(以下、「MERS」という。)は2012年に発生した重症呼吸器感染症であり、現在でもヒトコブラクダがMERSコロナウイルス(以下、「MERS-CoV」という。)を保有していることから、将来的に変異ウイルスが出現し、パンデミックが起こることが懸念されています。本研究では、MERS治療薬の候補として、MERS-CoVのレセプター分子であるDPP4の結合力を高めた高親和性DPP4製剤を開発しました。高親和性DPP4製剤は野生型DPP4と比較して、約500倍のウイルス中和活性を示しました。また、広範囲のMERS-CoV変異体への中和活性が確認されたことに加え、コウモリやセンザンコウが持つ近縁ウイルスにも効果が確認されました。マウス感染実験では高い感染予防効果が確認され、高親和性DPP4製剤は懸念されるMERSパンデミックだけでなく、動物由来の未知のコロナウイルスパンデミックにおいても予防/治療への応用が期待されます。  

本研究の背景

 新興感染症発生は局地的に、時にはパンデミックとなり国際的に公衆衛生上の問題となります。呼吸器ウイルス感染症も度々パンデミックを起こし、近年では2009年の新型インフルエンザや2019年の新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)が世界中で流行しました。その他、2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)が発生しています。特にMERS-CoVは現在もヒトコブラクダが保有しているため、将来的にパンデミックが懸念されています。未知のウイルス感染症の場合には事前の対策に限りがあり、COVID-19では平常化まで3年以上を要しました。このような事態を避けるために、将来パンデミックの懸念がある感染症に対してはワクチンや治療薬の開発が望まれています。我々はこれまでにも、COVID-19の治療薬として高親和性ACE2製剤の開発を行ってきました。ACE2は新型コロナウイルスのレセプター分子であり、開発した高親和性ACE2製剤は新型コロナウイルスの武漢株からオミクロン株、直近のKP.3株に至るまで効果を維持しており、コウモリなどの動物がもつウイルスにも効果があることが確認されています。そこで、本研究では同様の戦略で将来パンデミックを起こす懸念があるMERS-CoVや近縁のウイルスに対する治療薬の開発を試みました。  

論文情報

雑誌名 Cell Biomaterials
掲載日 2025年3月14日(日本時間)

オンライン閲覧 可 論文タイトル(英・日)
Engineered DPP4 decoy confers broad-spectrum inhibition of MERS-CoV infection
「DPP4デコイ製剤は広範囲のMERS-CoV感染を抑制する」 著者
Keisuke Nishioka, Yusuke Sakai†, Daisuke Motooka, Naoko Iwata-Yoshikawa, Hiroaki Tojo, Satoaki Matoba, Noriyo Nagata, Takaaki Nakaya, Takao Arimori†, Atsushi Hoshino†
†責任著者:星野 温、有森 貴夫、坂井 祐介   プレスリリース資料はこちら