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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年3月17日

炭素原子1つを押し出す新反応

コールタールに豊富に含まれるピリジンを医薬品分子骨格に作り替える

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域環境学化学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
資源利用/光エネルギー/芳香族/ケイ素/ピリジン/芳香族化合物/可視光/持続可能/持続可能な開発/ホウ素/医薬品合成/生理活性/生理活性物質/創薬/有機合成/誘導体
2025-3-13●自然科学系基礎工学研究科教授鷹谷 絢

発表のポイント

  • ピリジン(6員環)をピロリジン(5員環)へと作り替える新反応を発見
  • 芳香族化合物のピリジンは安定で反応性に乏しいが、光エネルギーとホウ素反応剤を組み合わせて用いることで、ピリジンから「炭素原子1つを押し出し」ピロリジンを生成することに成功
  • 安価で大量に入手可能な化合物から、医薬品合成に役立つ高付加価値化合物を1段階で合成可能
  • 創薬研究の加速、化石資源利用法としての展開が期待できる
  • 発表概要

    大阪大学大学院基礎工学研究科の上野凌向さん(特別研究学生、東京科学大学理学院化学系博士前期課程所属)、鷹谷絢教授らの研究グループは、ピリジン(6員環)の炭素原子1つを押し出すことで、ピロリジン(5員環)へと作り替える新反応を開発しました。
    芳香族化合物であるピリジンをより小さな環員数の化合物へと変換することは、その芳香族性を失うことから困難でした。今回、鷹谷教授らのグループは、光エネルギーとホウ素反応剤を組み合わせて用いることで、ピリジンの安定な6員環から炭素原子1つを環外へ押し出し、5員環のピロリジン骨格を得る新反応を開発しました。本反応は、コールタールに豊富に含まれるピリジンを、医薬・農薬品などの高付加価値化合物へと一挙に変換できる新手法であり、創薬研究の加速や、新しい化石資源利用法としての展開が期待されます。
    本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、3月13日(木)19時(日本時間)に公開されました。

    図1. 炭素原子1つを押し出すことで、ピリジン(6員環)をピロリジン骨格(5員環)へと作り替える新反応

    研究の背景

    含窒素5員環化合物であるピロリジンは、天然に存在する生理活性物質や医薬・農薬品などの基本骨格として多く含まれています。従って、その効率的な合成手法の開発は創薬研究における重要な課題です。一方で、含窒素6員環芳香族化合物であるピリジンは、コールタールに大量に含まれる化石資源であり、含窒素化合物を合成するための原料として有望です。しかし、芳香族化合物であるピリジンをより小さな環員数の化合物へと変換することは、その芳香族性を失うことからエネルギー的に不利であり、困難とされてきました。

    研究の内容

    鷹谷教授らの研究グループでは、ピリジン(6員環)とシリルボラン(ケイ素−ホウ素結合をもつ反応剤)に対して近紫外〜可視光を照射すると、ピロリジン誘導体(5員環)が得られるという反応を発見しました。本反応では、ホウ素反応剤と光エネルギーによる活性化を利用することで、6員環芳香族化合物であるピリジンから炭素原子1つを環外へと押し出し、5員環と3員環が縮環したピロリジン誘導体へと環構造を作り替えることができます。さらに、得られたピロリジン誘導体を様々な含窒素化合物へと短段階で変換することにも成功しました。これにより、安価で大量に入手できるピリジンを原料として、医薬・農薬品として利用される高付加価値含窒素化合物を簡便に合成することが可能になります。

    本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

    本研究成果により、医薬・農薬品候補化合物を短工程で効率的に、かつ多様に合成することが可能となり、創薬研究の加速が期待されます。また、コールタール中に豊富に含まれるピリジンを炭素資源・窒素資源として用いる新しい化石資源利用法としての展開が期待されます。

    特記事項

    本研究成果は、2025年3月13日(木)19時(日本時間)に英国科学誌「Nature Communications」(オンライン)に掲載されました。
    タイトル:“Pyrrolidine Synthesis via Ring Contraction of Pyridines”
    著者名:Ryoga Ueno, Shohei Hirano and Jun Takaya*(責任著者)
    DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-025-57527-w
    なお、本研究は、JSPS科学研究費助成事業基盤Bならびに学術変革領域研究(A)「デジタル有機合成(Digi-TOS)(公募)」の一環として行われました。

    参考URL

    鷹谷教授 研究者総覧
    https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/55261308c029172a.html

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