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京都大学 研究Discovery Saga
2025年3月12日

ペンバ効果の統一理論を構築

―熱的緩和現象の新たな理論枠組み―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学工学
【Sagaキーワード】
統一理論/熱機関/非平衡/非平衡物理/非平衡物理学/量子コンピュータ/緩和現象/体系化
この研究の主な対象者 企業・研究者の方 公開日

概要

Vu Tan Van 基礎物理学研究所准教授、早川尚男 同教授らの研究グループは、熱的緩和過程におけるペンバ効果を統一的かつ厳密に定量化する新たな理論枠組みを構築しました。ペンバ効果とは、通常の直感に反して、高温の物質が低温の物質よりも速く冷却される現象です。従来の研究では、特定の距離測定法を用いてその有無を判定していましたが、測定法の選択によって結果が変わるという根本的な課題がありました。本研究では、この問題を解決するために、「熱的マジョライゼーション」という数学的手法を導入し、異なる距離測定法に依存しない統一的な理論枠組みを開発しました。この新しい理論により、ペンバ効果の評価が特定の測定法に依存せず、全ての測定法を同時に考慮した場合と等価であることを示しました。さらに、ペンバ効果が特定の温度範囲に限定されるものではなく、幅広い温度領域で発生しうることを明らかにしました。この枠組みは、古典系と量子系などの様々な熱的緩和過程にも適用可能であり、非平衡物理学の新たな視点を提供します。今後、この理論を基にした実験的検証が進めば、熱的緩和現象の理解がさらに深まり、熱機関や量子コンピュータなどの分野への応用も期待されます。
 本研究成果は、2025年3月10日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。さらに本論文は、同誌の「Editors' Suggestion」(注目論文)に選定されました。
(左)従来のペンバ効果の理論では、全変動距離やカルバック・ライブラー発散など、特定の距離測定法を用いて緩和速度を定量化する。(右)本研究では、熱的マジョライゼーションに基づくペンバ効果を提案し、すべての距離測定法を同時に活用して緩和の傾向を包括的に評価する新たな枠組みを構築する。

研究者のコメント 「本研究では、無数に存在する異なる定量化手法を統一することで、ペンバ効果をより普遍的な視点から捉える新たな枠組みを提案しました。一見すると不可能に思える問題であっても、理論的に体系化し、その整合性を示せたことに大きな喜びを感じています。今後は、この理論のさらなる発展を図るとともに、広範な熱緩和現象との関連を明らかにし、その応用可能性を探っていきたいと考えています。」(Vu Tan Van)

詳しい研究内容について

ペンバ効果の統一理論を構築―熱的緩和現象の新たな理論枠組み―

研究者情報

研究者名 VU Tan Van
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名 早川 尚男
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.107101
【書誌情報】
Tan Van Vu, Hisao Hayakawa (2025). Thermomajorization Mpemba Effect.Physical Review Letters, 134, 107101.

関連部局

基礎物理学研究所