Smadによるシグナル伝達と細胞生物学的作用の研究
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
TGF-β / DNAマイクロアレイ / 浸潤 / 受容体 / Smad / 血管内皮細胞 / 転写調節 / 細胞分化 / 骨形成因子 / 骨芽細胞 / シグナル伝達 / 表皮角化細胞 / 血管新生
【研究成果の概要】
1.BMPによるC2C12細胞の骨芽細胞への分化にSmadがどのように関わっていくかを、アデノウィルスベクターによる発現系を用いて検討した。BMP処理を行った細胞で、ALP活性の上昇が認められるが、Smad1及びSmad5を過剰発現された細胞ではその活性が更に増強された。抑制型Smadを過剰発現させた細胞では、逆にALP活性の低下が認められた。C2C12細胞の骨芽細胞様分化誘導におけるBMP-4とBMP-6のシグナル経路を解析した。BMP-4は主にALK-3に結合してSmad1/5/8を活性化するのに対し、BMP-6はALK-2に結合しSmad1/5を活性化した。また、BMP-4とBMP-6の両者を加えることにより、いずれか一方よりも強力な分化誘導作用が見られた。
2.血管内皮細胞ではTGF-βのI型受容体であるALK-5に加えてALK-1が発現しており,それぞれが異なるR-Smadを活性化する。血管内皮細胞におけるTGF-βの標的遺伝子を明らかにする目的で,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に活性型のALK-1とALK-5をアデノウイルスベクターを用いて導入し,オリゴヌクレオチドマイクロアレイを行った。その結果、約7000の遺伝子の中からALK-1ではSTAT1、endoglin、Idファミリーの転写因子、Smad6、Smad7などが特異的に誘導されることがわかった。一方、ALK-5ではclaudin5の抑制が見られ、tight junctionの形成がALK-5で影響を受けることが考えられた。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞にALK-5を導入すると細胞の増殖抑制が見られ、一方ALK-1を導入するとin vitroでの細胞分化促進が見られたことから、DNAチップで得られた遺伝子が血管内皮細胞の増殖・分化に関与していることが示唆された。
【研究代表者】