生体寛容性金属触媒によるマウス内での生物活性分子の合成とがん治療
【研究キーワード】
生体内合成 / がん治療 / 糖鎖 / 人工金属酵素 / マウス
【研究成果の概要】
本年度では、生体内反応の系として、触媒的環化反応による生物活性分子の合成(分子合成)を行なった。この際、マウス内での反応基質の有効濃度を考えて、分子内環化反応による生物活性分子の合成を検討した。すなわち、金(III)触媒のpai親和性をトリガーとした、アセチレンに対する分子内アミノ基付加環化反応を利用して、様々な置換基を持つフェナントリジニウム構造を構築することに成功した。フェナントリジニウム構造を持つ化合物は、細胞のDNAに結合することで細胞増殖を抑制することが知られており、抗がん活性物質として注目されている分子を効率的に合成することもできた。環化前駆体から抗がん活性分子へと変換されることによって、特定のがん細胞に対して100倍の活性向上を実現した。
さらに、報告者が実績を持つ生体内で高い活性を持つルテニウム触媒を用いることにより、分子内メタセシス反応に続く脱水反応を経て、生体内でのベンゼン誘導体の合成を検討した。その結果、薬理活性に特徴的な基盤構造であるナフタレンやビフェニル、ヒドロキノンやアントラセン、カルバゾールやジベンゾフラン、さらにはベンゾチオフェンやフェナントレン構造を効率的に合成することができた。さらにこの生体内合成反応を用いて、チューブリン阻害剤であるコンブレタスタチンA-4天然物誘導体を合成することにも成功した。この場合においては、環化前駆体から抗がん活性分子へと変換されることによって、1,000倍の抗がん活性向上を実現した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)