鳥類および哺乳類における概日時計の自己発振と光同調の分子メカニズム
【研究分野】動物生理・代謝
【研究キーワード】
松果体 / ニワトリ / ヒートショックタンパク質 / サーカディアンリズム / グルコース / 時計遺伝子 / 光受容 / 転写因子 / 概日リズム / 転写抑制 / MAPキナーゼ / リン酸化
【研究成果の概要】
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。
1.動物における光依存的転写調節に関わる遺伝子配列(光応答エレメント)は未だ同定されていない。そこで、初年度にひき続き、光に応答するピノプシン遺伝子のプロモータに着目し、ニワトリ松果体細胞を用いた転写アッセイによる解析を行った。その結果、18塩基からなる光応答エレメントを同定することに成功した。このエレメントには時刻情報の入力配列であるCACGTG型のE-box配列が含まれていたことから、松果体をはじめとする動物の光感受性時計細胞においては、光情報と時刻情報がE-box配列において統合されている可能性が強く示唆された。さらに、ゲルシフト解析の結果、この光応答エレメントに作用する因子は、肝臓等の種々の臓器に発現する転写抑制因子であることがわかった。光応答エレメントの解析と並行して、ニワトリ松果体において光応答するピノプシン以外の遺伝子を探索した結果、Hsp90遺伝子の転写が光刺激により顕著に増大することが判明した。
2.新規時計関連分子の同定を目指して、時計発信系を内包するモデル培養細胞(rat-1細胞)を用い、時計遺伝子のリズム発現に関わる因子を探索した。その結果、rat-1細胞をグルコースにより刺激することによって、Per1をはじめとする時計遺伝子の発現量が一過的に減少し、それに続いて概日リズムを示すことを発見した。さらに、種々の薬剤を用いた解析の結果、グルコースによるリズム誘導減少には新たな遺伝子の転写が関与していることが示唆された。そこで次に、グルコースによるリズム誘導の分子メカニズムを知るための手がかりを得るために、マイクロアレイ解析によりグルコース応答遺伝子を検索した。その結果、時計遺伝子の発現を制御する分子の候補としてVdupおよびTieg1遺伝子を同定することができた。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】2,500千円 (直接経費: 2,500千円)