アミノアシルtRNA合成酵素の新規生理機能の探索とその制御機構の解明
【研究キーワード】
蛋白質 / アミノアシルtRNA合成酵素 / 生体分子 / 機能 / 制御機構 / トリプトファン / 免疫寛容
【研究成果の概要】
アミノアシルtRNA合成酵素はtRNAにアミノ酸を結合させるアミノアシル化反応を触媒する酵素である。我々は、ヒトのトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)がこの触媒機能に加え、細胞外に分泌された後、血管新生抑制因子として働くことを発見した。また、最近、ヒトTrpRSがインターフェロン-γ(IFN-γ)に応答して発現量が著しく増加し、細胞内から細胞外に分泌され、免疫寛容に関わる細胞外から細胞内へのトリプトファン(Trp) に対する高い親和性と高い選択性を有する高感度なTrp輸送に関わることを発見した。本研究課題では、我々が最近発見したTrpRSを介した高感度なTrp輸送機構を分子レベルで解明することを目指している。癌細胞では、Trpを代謝する酵素が高発現しており、癌周辺のTrpを枯渇させることでT細胞の増殖を抑え免疫寛容が生じることが明らかになっている。これまでに、Trp代謝酵素により誘導されるTrp欠乏状態が細胞外のヒトTrpRS蛋白質による高感度Trp輸送を著しく促進させることを明らかにした。今年度は、Trp欠乏培地中で、ヒトTrpRSを過剰発現させた細胞と通常細胞とを培養し細胞内への高感度Trp輸送を比較解析することにより、TrpRS蛋白質発現がTrp欠乏状態での高感度Trp輸送に直接関与していることを実証した。また、部位特異的アミノ酸置換TrpRSを用いて解析することにより、Trp欠乏状態での高感度Trp輸送にはTrpRSのトリプトファニルAMP形成能が重要であり、tRNAへのアミノアシル化能は重要ではないことも明らかにした。さらに、IFN-γによる高感度Trp輸送の増加にヘム合成が必須であることも明らかにした。今後、Trp欠乏状態により発現量が増加し細胞膜上でTrpRSと相互作用する分子の特定に挑む予定である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)