プレシナプスにおけるアルツハイマー病発症の分子機序解析
【研究分野】病態医化学
【研究キーワード】
アルツハイマー病 / iPS細胞 / シナプス / プレセニリン / 神経科学
【研究成果の概要】
PS遺伝子のヒト神経細胞での生理的機能を検討するため、CRISPR/Cas9系を用いて、健常人由来ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)からPS条件的ノックアウトiPSCを作製した。これらのiPSCを大脳皮質神経細胞へ分化誘導し、Cre発現レンチウイルスを感染させることで、神経細胞でのPS発現を消失させることに成功した。これらのPSノックアウト神経を用いてAβ産生を測定したところ、PS1/PS2の両方ともノックアウトした神経細胞のみAβの低下が認められた。マウスでのAβ産生には主にPS1が重要であることから、ヒト神経細胞ではマウスとは異なるPS/γセクレターゼの性質を持つことが示された。
【研究の社会的意義】
アルツハイマー病(AD)の臨床・病理診断には長らく老人斑や神経原線維変化の責任分子であるAβやタウが用いられており、ADの発症や進展に関与していると広く受け入れられている。しかし、家族性ADで同定されている変異の大部分はPS遺伝子であるにもかかわらず、老人斑や神経原線維変化への寄与がマウスでは顕著ではなかった。本研究成果は、ヒト人工多能性幹細胞を用いることでヒト神経細胞でのPSの生理的機能を探求し、ヒトとマウスでのAβの産生能に対するPSの機能に差があることが分かった。AD発症におけるPS変異の機能的な影響を解明していくことは、画期的なAD治療薬の創出に繋がることが考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2017-04-01 - 2020-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)