膜受容体の流動性とシグナル伝達の関係性から見た揮発性麻酔薬作用機序の解明
【研究キーワード】
揮発性麻酔薬 / 膜受容体 / 流動性 / シグナル伝達 / 麻酔メカニズム / 糖取り込み / GABAA受容体 / 作用機序
【研究成果の概要】
本研究は、細胞膜上の受容体の流動性とシグナル伝達の関係性を探ることによって、麻酔メカニズムの解明を試みるものである。
2019年度はGABAA受容体γサブユニットの強制発現細胞株の樹立を目指したが(担当;小野、鈴木、樺山)、導入効率や蛍光発現量の不安定性の問題解決が困難で、この研究は縮小とした。
2020年度(令和2年度)は、安定細胞株の代替手段として生細胞のネイティブなGABAA受容体を用いて実験を進めた(担当;坂内、小野)。具体的には、マウス大脳皮質の神経細胞を培養して、イソフルランを作用させた時のポストシナプスにおけるGABAA受容体の側方拡散を「量子ドットによる単一粒子追跡法」を用いてライブセルイメージングで観察した。量子ドットとは、直径約15~25nmの半導体素材からなるナノ結晶であり,生命科学の分野では蛍光プローブとして用いる。実験結果から、イソフルランを作用させるとGABAA受容体の拡散係数は一旦増大の後、低下することが分かった。一方、免疫細胞化学による分析ではGABAA受容体の局在自体がシナプスに少ないことが分かった。(日仏生物学会第194回例会、第44回日本神経科学大会にて学会発表)
2021年度は前年度に得られた知見を更に追及するために、GABAA受容体のみならず、AMPA型グルタミン酸受容体の動態も量子ドットを用いて調べた。その結果、GABAA受容体と同様に拡散係数の増大が生じた後、減弱に転じるという傾向がみられた。また、膜受容体の側方拡散に影響を与える因子として細胞骨格に着目して、麻酔作用下におけるβアクチンの変化を調べている。
【研究代表者】