骨髄間質細胞由来の心筋細胞を用いた心不全治療法の確立
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
幹細胞 / 骨髄 / 心筋細胞 / 再生 / 心不全 / 細胞分化 / 細胞移植 / 再生医学 / 骨髄細胞 / 発生
【研究成果の概要】
本研究では骨髄間質細胞を分化誘導することにより心筋細胞を作製し、心不全治療に応用しうるレベルに至るまでの基礎研究を行った。今回の一連の研究を通して、(1)骨髄中の多分化成体幹細胞を用いることにより心筋細胞が分化誘導できること、(2)この現象はマウスのみでなく、ヒトの骨髄成体幹細胞を用いても再現できること、(3)骨髄由来の心筋細胞は胎児期心室筋の表現型を取ること、(4)分化当初は洞結節型の活動電位を呈するが、分化とともに心室筋型の活動電位を呈すること、(5)交感神経α1受容体を発現し、心肥大作用を伝達すること、(6)交感神経神経β受容体を発現し、陽性変時作用、陽性変力作用を伝えること、(7)副交感神経ムスカリンM2受容体を発現すること、(8)蛍光色素GFPと心筋特異的プロモーターを使用することにより、心筋細胞のみを単離出来ること、(9)単離した再生心筋細胞を心臓内に移植すると、心臓内で長期間生着出来ること、(10)このような幹細胞は心筋梗塞などの心筋の壊死炎症がある状況では拘束部位に移動し、心筋やほかの細胞に分化する能力を持つこと、(11)ある種のサイトカインは骨髄から幹細胞の移動に積極的に働くこと、(12)幹細胞と心筋細胞の共培養は幹細胞の心筋分化を誘導する可能性のあること、(13)心筋分化能のある骨髄成体幹細胞の表面抗原はヒトとマウスで異なること、(14)ヒトの骨髄成体幹細胞はin vitroで長期間培養するとテロメアの長さの関係で細胞増殖できなくなるが、いくつかの遺伝子導入を行うことにより、細胞増殖できるようになることなどが明らかとなった。このことは骨髄成体幹細胞から分化誘導した心筋細胞は生体内の心筋とほぼ同等の性質を持ち、心筋細胞移植が一歩現実に近づいたことを意味するものである。
【研究代表者】