てんかんと記憶に関わる脳内機能的結合性の特性抽出と外科的及び電気刺激による介入
【研究分野】脳神経外科学
【研究キーワード】
てんかん / 記憶 / 神経ネットワーク / 海馬 / 迷走神経刺激 / 光トポグラフィー / 機能的MRI
【研究成果の概要】
本研究では、てんかんと記憶に関わる大脳ネットワークに対する外科的介入や電気刺激による介入の影響を検討した。モデルはラット、ミニブタ、そしてヒトにおけるてんかん手術を用いた。迷走神経刺激が大脳皮質の各層へ異なる影響を及ぼしていることを見出した。また、脳回と脳溝が発達したブタにおける多点記録システムを確立した。ヒトの記憶について機能障害と機能回復に伴う賦活パターンの変化が手術操作の加わった側頭葉内側に留まらず広範囲であることを見出した。これらの結果は、てんかんや記憶のmodulationに対して、焦点に対するアプローチよりもネットワークに対するアプローチがより有効である可能性を示唆するものである。
【研究の社会的意義】
てんかんに対する新しい手術や電気刺激による介入は、てんかん焦点の単純な切除や抑制ではなく、生理的・病的な機能ネットワークの修飾として作用している可能性が示された。「新しい手術手技や電気刺激は、てんかんや記憶に関するネットワーク全体を変調させることによってその効果を発現している」との仮説に基づいて、その機構を理解し、治療効率を高めることは、革新的治療の開発につながる可能性があり、そのインパクトには計り知れないものがある。特に、本研究のような広帯域の機能的ネットワークに注目した研究は世界でも最先端のもので本邦ではいまだ稀少でその意義は大きい。
【研究代表者】