心血管系幹細胞の培養系確立と分化誘導機構の解明および遺伝子治療への応用
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
細胞分化 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 神経堤細胞 / ウイルスベクター / 遺伝子導入 / エンドセリン / 遺伝治療 / 神経提細胞 / 遺伝子治療
【研究成果の概要】
増田は、神経病原性マウスレトロウイルスPVC-211が他のウイルスに比べてラット血管内皮細胞への遺伝子導入効率が高いこと、また、標的となる内皮細胞を2-デオキシグルコースで前処理し、ヘパリン非存在下でベクターウイルスを接種するとさらに導入効率が上がることを見出した。また、可逆的遺伝子導入が不可能であるというレトロウイルスベクターの問題に対処するため、Cre-loxP相同組換えを利用した2種類の新規レトロウイルスベクターを開発した。一つは、ベクター内構造のCre依存性逆位により導入遺伝子の発現を可逆的に制御する“Flip-Flop"型ベクター、もう一つはLTR内にloxP配列を持ち、Cre依存性に導入遺伝子を除去できる切り出し可能型ベクターである。後者はプロウイルス組込み部位の宿主ゲノムや、ベクターによる挿入変異の影響の解析にも有用である。
栗原らは、マウス胚由来の初代培養神経堤細胞から血管平滑筋細胞への分化をex vivoで誘導しうる系を確立した。また、この培養系を利用して、平滑筋細胞コロニー形成がエンドセリン(ET-1)に依存すること、FGF-2は平滑筋分化を抑制し、BMP-2およびBMP-4による分化促進効果とは対照的であることなどを明らかにした。さらに、ET-1ノックアウトマウスの解析から、ET-1がbHLH型DNA結合蛋白であるdHANDの発現維持を介して血管系発生分化の制御に関与している可能性を示した。
以上2カ年の研究により(1)心血管系平滑筋幹細胞の初代培養・分化誘導系の確立と解析、(2)心血管系細胞への可逆的遺伝子導入用ベクター系の開発を達成した。今後はこれらの成果を応用し血管平滑筋細胞への分化能を保持した株化細胞を樹立し、心血系疾患の遺伝子治療動物モデルを作成していく予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
新藤 隆行 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 |
栗原 由紀子 | 医薬品副作用被害救済研究振興調査機構 | 研究員 |
岡山 峰伸 | ディナベック研究所 | 技術研究員 |
栗原 裕基 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】11,800千円 (直接経費: 11,800千円)