放射線高感受性細胞死の分子生物学的研究
【研究分野】放射線生物学
【研究キーワード】
放射線高感受性 / 細胞死 / 小腸上皮 / クリプト / 幹細胞 / Radiation / Radiosensitivity / Hypersensitive cells
【研究成果の概要】
マウス小腸上皮細胞群の分画方法を確立させた。すなわち、マウス体内より切り出し、さらに内外を反転した小腸組織から出発し、じゅう毛の先端部分から増殖単位であるクリプトの底部に至るまで、順次、細胞群を取り外しながら分画していく方法である。Iー125でラベルされたデオキシウリジンをマウス腹腔に投与し、上記操作にて小腸上皮細胞群の分画を行い、取り込まれた放射能をガンマカウンタ-にて測定した。さらに、酸不溶分画でもってDNA中に取り込まれている放射能を測定した。Iー125の放射能値のピ-クが1.5〜2.0時間の時点に出現するように操作を改良し、分画方法を確立した。マウス下半身に10Gyを照射し、照射後0.5〜5日にかけてのHー3チミジン反復投与法によりマウス腸上皮の幹細胞がラベルできることを確認した。さらにこのようにラベルしたマウスを長期間飼育し、0.5,1,2,3,4カ月の各時点でCー14チミジンを1回投与し、30分後に腸上皮の細胞群の分画操作を行い、液体シンチレ-ションカウンタ-にて、それぞれの放射能を測定した。幹細胞の分画(Hー3)はDNA合成細胞の分画(Cー14)と同一ではなく、しかもクリプト底部に対応した分画であることが示された。
同様にして幹細胞をラベルしたマウスを作成し長期間飼育した後、ガンマ線照射で細胞死を起こす細胞つまり放射線高感受性細胞とHー3チミジンを何ヵ月も保持する細胞(幹細胞)との同一性を調ベた。長期間ラベルを保持している細胞は休止期にあると考えられるが、このような細胞のクリプト内分布はクリプトの底部からの細胞位置で3番目近くにその中央値を示した。これに対し、0.5Gyまたは9.0Gyのガンマ線照射によって細胞死を起こした細胞のクリプト内分布は5番目付近に中央値を示した。つまり、長期間ラベルを保持する細胞と放射線高感受性細胞とは別の細胞集団であることが示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
野川 憲夫 | 東京大学 | アイソトープ総合センター | 教務職員 | (Kakenデータベース) |
垰 和之 | 東京大学 | アイソトープ総合センター | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1989 - 1991
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)