成体幹細胞を用いた雌性生殖器官の臓器再生と疾患モデルの構築
【研究分野】産婦人科学
【研究キーワード】
子宮内膜 / 子宮筋 / 幹細胞 / 動物モデル / 再生医学 / 子宮内膜症 / 免疫不全マウス / 再生
【研究成果の概要】
本研究では、子宮内膜、子宮平滑筋といった雌性生殖器官における成体幹細胞システムの基礎的解明とともに、臓器再生と疾患モデル構築の技術開発という応用面に重点を置いて、以下の3点について研究を進めた。以下がその成果の概要である。
A.雌性生殖器官組織における幹細胞の分離・同定および幹細胞特性の解明
Side population(SP)法を用いて、子宮内膜と子宮平滑筋からSP細胞を純化・精製する方法を確立し、それぞれが未分化状態にあることに加えて、自己増殖能や多分化能といった幹細胞様特性を有することを明らかにした。
B.雌性生殖器官幹細胞を用いた臓器構築とその再生医療への応用
ヒト子宮筋より分離したSP細胞は、重度免疫不全マウス子宮においてヒト子宮筋を構築する能力を有することを示した。さらに、同マウスの腎被膜下に少数のヒト内膜分散細胞を移植することにより、ユニークな血管新生を伴い、且つホルモン反応性変化を呈する内膜組織が再構築されることを示した。さらに、その再構築内膜の振る舞いを、蛍光・発光蛋白マーカーを用いて、非侵襲的リアルタイムに観察可能なシステムを構築し、内膜再生モデルとしての有用性を示した。
C.雌性生殖器官幹細胞を用いた疾患モデルの構築
上記のヒト内膜再生モデルマウスは、内膜症モデルマウスとしてのポテンシャルを有しており、内膜症の発症・進展メカニズムの解明や内膜症治療薬の開発において有用な研究ツールになる可能性を示した。
内膜細胞あるいはその幹細胞から胚受容能を有するヒト内膜組織を再構築しin vitro着床システムの確立を目指しているが、その実験ツールとして、ヒト絨毛細胞株スフェロイド(胚に相当)と内膜腺上皮株を用いたin vitro着床モデルを確立した。また、着床に必須の内膜分化を担う分子メカニズムを明らかにし、それを標的にした着床制御に必要な基盤データも得た。
【研究代表者】