表皮細胞デスモゾームの分子形態および棘融解発生機序の免疫電顕法を用いた解明
【研究分野】皮膚科学
【研究キーワード】
尋常性天疱瘡 / 免疫電顕 / デスモソーム / デスモプラキン / デスモグレイン / プラコグロビン / モデルマウス / 細胞接着 / 免疫電顕法 / 電子顕微鏡 / 自己免疫疾患
【研究成果の概要】
尋常性天疱瘡(PV)はデスモソームに存在するデスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体により表皮細胞が棘融解をきたす自己免疫性水疱症である。Dsg3自己抗体が抗原に結合してから棘融解が生じるまでの水疱発症機序はいまだ明かではない。今回我々は、正常マウス、PVモデルマウス、Dsg3欠損マウスを用いて、近年開発された超低温免疫電顕法により、in vivoにおける抗原蛋白の分布・局在様式を電顕的に観察し、分子形態学的に棘融解発症機序を検討した。Dsg3欠損マウスでは、DPのみが正常マウスに比して約11nm細胞内側に偏位していた。これはデスモソームにおけるDsg3、DP間の相互作用の存在を示唆している。また、デスモソーム一つあたりの標識数を解析した結果プラコグロビン(PG)のみに有意な分子密度の減少を認め、それ以外の分子は異常を認めなかった。次にPVモデルマウスにおいて検討した。表皮基底細胞の側面ではデスモプラキン(DP)はデスモソームから離れ、ケラチン線維とともに細胞質内側へ大きくシフトしている像を観察された。また、表皮中層のデスモソームではDPのみが24nmと、大きく細胞内側に偏位していたが、1デスモソームあたりの分子密度は有意な変化を示すものを認めなかった。
Dsg3-/-マウスではPGの数が減少していることがDPの変位につながると考えられたが、一方、PVモデルマウスではPGの数や位置の変化を伴わずにDPが大きく変位していることから、自己抗体のDsg3への結合のシグナルが、直接結合してない細胞内のDPに伝達され、細胞質内の変化を生じたことが示唆された。以上より、Dsg3-/-マウスとPVモデルマウスのデスモソームで生じている分子変化に差があることが示された。また、自己抗体結合後に細胞質内変化が起こることをin vivoで初めて証明することができた。
【研究代表者】