日本人特有のゲノム変異に基づく難治性血管病の病態解明と新規創薬ターゲットの検索
【研究キーワード】
肺動脈性肺高血圧症 / ゲノム解析 / オミクス解析 / 全身血管病 / 指定難病 / 病態解明研究 / 個別化医療 / 難治性血管病 / RNF213 / もやもや病 / 遺伝子関連血管病
【研究成果の概要】
RNF213 R4810Kバリアントはヒトにおいて肺動脈性肺高血圧症の疾患発症感受性遺伝子であり、従来の血管拡張薬への反応性が乏しく、予後不良と関連することを報告した。またもやもや病や末梢性肺動脈狭窄症など複数の難治性血管病において疾患発症と関連することが報告された。一方でRNF213 R4810Kバリアントは日本人の健常者でも1%弱に認める変化であり、浸透率が低いことが特徴である。発症原因の特定、および新規治療薬を開発することで、複数の難治性血管病に対する加療が可能となる。マウスのRNF213遺伝子にR4828K変異(ヒトのR4810Kに相当)をCRISPR-Cas9システムを用いて導入した。常酸素下では肺高血圧症を発症しなかったが、10%低酸素環境に3ヶ月間暴露すると肺高血圧症を惹起した。肺マイクロアレイ解析では細胞増殖や血管炎症に関わる因子が複数変動しており、その一部を阻害する薬剤を追加投与すると、右室や肺血管のリモデリングを有意に抑制し、肺高血圧症は軽症であった。今後は肺組織のうちどこに作用するのか、分子メカニズムを含めた解析を進めていく。
また肺以外の臓器においても血管病変の評価を行ったが、現時点では有意な変化を認めていない。既報でもR4828Kバリアントの過剰発現モデルでも脳血管障害は発症しておらず、臓器ごとに表現型が異なる可能性が示唆された。実臨床でも、同一遺伝子変化を持ちながら患者ごとに発症する血管病変は異なるため、エピジェネティックな修飾因子や環境因子が疾患発症に関連すると考えており、今後も発症メカニズム解明に向けて研究を行う。
RNF213 R4810K陽性の患者は、従来の肺血管拡張薬への反応性が乏しく、診断からの平均余命は数年と短い。新規肺高血圧症治療薬開発に向けて研究を進めていく。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)