アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用した遺伝子治療のための基盤テクノロジー開発
【研究分野】血液内科学
【研究キーワード】
AAVベクター / 組織特異性 / 蛋白質補充遺伝子療法 / 染色体部位特異的遺伝子組込み / Rep / ITR / アデノウイルスベクター / アダプター分子 / エリスロポエチン / 凝固因子 / 免疫反応 / 遺伝子治療 / 遺伝子導入 / 血清型 / AAVS1領域 / TVI法
【研究成果の概要】
非病原性のアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するAAVベクターは安全性が高く、標的細胞としては、筋細胞・肝細胞・神経細胞などの非分裂細胞が適している。最近、AAVの血清型と組織特異性の関係が注目されている。また、AAVのユニークな特徴の一つとして、ウイルスゲノムが宿主細胞の染色体DNAに部位特異的(19q13.3-terに存在するAAVS1領域)に組み込まれることが知られている。そこで、AAVを利用した遺伝子導入法の基盤テクノロジーとして、以下の研究を実施した。1)AAVベクターの構築(血清型/プロモーター)と組織特異性に関する検討:AAV-1〜5に由来する各カプシドと種々のプロモーターを持ったAAVベクターを作製し、蛋白質補充遺伝子療法のための至適AAVベクターの構築を検討した。その結果、骨格筋では1型のベクターとCMVプロモーターの組み合わせが、肝臓では5型のベクターとCAGプロモーターの組み合わせが良好であった。ベクターを注入した筋組織には全く異常を認めなかった。2)AAVのコンポーネント(ITR配列とRep遺伝子)を利用した第19番染色体部位特異的遺伝子組込み(TVI)法の開発:Cre-loxP法によりRepの発現を制御したアデノウイルスベクターを構築し、このベクターにITRを連結したマーカー遺伝子を同時に搭載することを計画した。このシステムが働くことを、構築したプラスミドのトランスフェクションによるモデル実験で明らかにした。また、アデノウイルスベクターによる未分化造血系細胞への遺伝子導入効率を高めるために、アダプター分子(CAR-SCF)を作製した。CAR陰性c-Kit陽性の細胞株MO7eを用いた実験で、その有効性を確認した。この染色体部位特異的遺伝子組込み法が確立すれば、将来的にはヒトES細胞への応用が考えられ、重要なテクノロジーに発展する可能性がある。
【研究代表者】