無尾両生類(ツメガエル)の器官再生能を規定する分子的要因に関する研究
【研究キーワード】
アフリカツメガエル / 再生 / FGF10 / インターロイキン11 / IL11受容体 / 器官再生 / 未分化増殖細胞 / 器官再生能 / 増殖細胞 / 成体
【研究成果の概要】
アフリカツメガエル幼生の肢再生能は発生ステージの進行に伴って低下する。早いステージ(st52以前)で肢芽を切断した場合は関節や全ての指の構造が形成されるが、遅いステージ(st58以降)で肢を切断した場合には関節や指を欠き、主に軟骨から成る「スパイク」が形成されるに留まる。本研究課題は発生進行に伴う再生能喪失の要因と、再生能の人為的賦活化の方策の探索を目的とし、今年度は以下の実験を実施した。(1)発生ステージ56付近の幼生肢を切断すると、一部の指を欠く限定的な再生能が見られるが、FGF10投与はその再生能を改善することが知られている。そこで肢芽切断後FGF10投与群・非投与群における再生芽のsingle cell RNA seq解析を行い、肢再生能と相関する遺伝子や細胞種を探索した。その結果、FGF10投与により、再生芽上皮(Apical Epidermal Cap; AEC)や軟骨芽細胞の遺伝子発現プロファイルが大きく変化することが分かった。以前からAECは肢芽再生に必要であること、スパイクでは軟骨細胞が増殖することが知られており、今回の知見は、その分子機構に迫る基礎データになると考えられる。さらにFGF10投与は、特定の白血球分画や線維芽細胞分画の発現遺伝子プロファイルにも影響することが分かった。これらの細胞種は、肢再生に関わる新たな細胞種の候補と考えられる。(2)ツメガエル幼生は高い尾再生能を持つ。幼生肢と尾の再生の分子機構を比較するに当たり、当研究室で以前に同定された、幼生尾再生時に未分化細胞誘導に働くインターロイキン11(Il11)の幼生尾における作用機序の解析を行い、Il11とIl11受容体α鎖との結合、Il11受容体α鎖遺伝子が尾再生に必要であること、Il11受容体を介したシグナルが細胞非自律的に未分化細胞誘導を起こすことを見出した(鈴木ら、Sci.Rep.)。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)