網羅的ゲノム解析による尿路上皮癌の分子病態の解明と個別化医療への応用
【研究キーワード】
尿路上皮癌 / 腎盂尿管癌 / ゲノム解析 / 分子サブタイプ / 上部尿路上皮癌 / 遺伝子変異
【研究成果の概要】
上部尿路上皮癌は膀胱癌に次いで代表的な尿路上皮癌であるが、その分子病態は十分に解明されていなかった。東京大学泌尿器科において手術を行った上部尿路上皮癌199症例について手術検体を採取し、全エクソンシークエンシングによる網羅的な遺伝子変異解析、RNAシークエンシングによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、TP53、FGFR3、RASの変異の状態により症例を5群に分類することが可能であった。この分子サブタイプは遺伝子発現のプロファイルや病変の部位、予後とよく相関した。また、尿沈渣からDNAを抽出し変異解析を行うことにより、高い感度・特異度で上部尿路上皮癌を診断することが可能であった。
【研究の社会的意義】
上部尿路上皮癌は腎盂および尿管に発生する悪性腫瘍である。組織学的に膀胱癌と類似するため膀胱癌に準じた治療を行うことが多いが、上部尿路上皮癌に注目して行われた研究は少ない。また膀胱癌と比べて診断の難易度が高く、早期発見が難しい悪性腫瘍である。進行例に対しては化学療法が行われるが、その治療成績は満足いくものではない。
本研究により上部尿路上皮癌の分子病態の全容だけでなく、分子病態により5つのサブタイプに分類できることが明らかになった。分子病態に基づいて症例を分類することにより、より適切な治療戦略を立てることが可能になることが期待される。さらに尿を用いた解析により診断の精度が上昇することが期待される。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2022-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)