鋭敏な聴覚の源であるモーター蛋白質プレスチンの精製とそれを用いた構造と機能の解明
【研究分野】耳鼻咽喉科学
【研究キーワード】
耳科学 / 蛋白質 / 分子モータ / Prestin / 原子間力顕微鏡 / 精製 / 等温滴定カロリメトリー / 生物物理 / 走査プローブ顕微鏡 / パッチクランプ法 / 等温滴定型カロリメトリー / 国際研究者交流 / アメリカ / 膜タンパク質
【研究成果の概要】
Prestinは哺乳類内耳外有毛細胞の細胞膜に高密度に発現している膜タンパク質である.細胞膜電位が変化すると,prestinは細胞内の陰イオンを輸送し,それに伴い構造変化すると考えられている.そして,その構造変化は外有毛細胞の伸縮運動を引き起こすと推察されている.Prestinについてその同定以来様々な研究が行われてきたが,prestinの形状や構造変化メカニズムは解明されていない.そこで本研究では,まず,prestin遺伝子を導入したChinese hamster ovary(CHO)細胞と遺伝子を導入していないCHO細胞の細胞膜を,それぞれ原子間力顕微鏡により観察し,prestinの直径が8-12nmであることを明らかにした.次に,prestin遺伝子を導入したCHO細胞膜のprestinを,量子ドット(Qdot)で標識し,原子間力顕微鏡で観察した.その結果,Qdot周辺に4つのピークを持ち中心部が窪んだ形状の構造物が観察され,prestinは4量体であることが推察された.最後にprestinの遺伝子を導入した細胞からprestin分子を精製した.そして,精製したprestinの活性を,等温滴定型カロリメータを用いて評価した.その結果,精製prestinは細胞中のprestinと同様に,塩化物イオンと相互作用すること,すなわち活性を有していることが示された.さらに,prestinの拮抗剤であると考えられているサリチル酸ナトリウムの存在下で同様の計測を行い,サリチル酸ナトリウムが濃度依存的にprestinと塩化物イオンとの相互作用を抑制することを明らかにした.
【研究代表者】